認知症予防の第一歩は生活習慣病の予防であるが,有酸素運動の有用性が多くの論文によって示されている。
認知症予防に最も期待されているのが「コグニサイズ」で,有酸素運動と知的活動を組み合わせた複合型の運動である。軽度認知障害(MCI)の集団を対象に週1回介入した二重盲検試験を行ったところ,一部の認知機能に改善がみられ,対照群との間で有意差がみられたことをSuzukiら1)が報告している(図)。現時点では認知症を発症しないというデータはなく,あくまでも地域在住のMCIの人の認知機能評価が1年後に改善し,対照群と比べて有意差があったというデータである。
しかし,認知機能が改善するという事実は,少なくとも認知症の発症を遅延させる効果が期待できる。このデータをもとに,さらに継続した前向き研究が必要であるが,地域ではコグニサイズリーダーを養成し,地域住民が普段から運動を習慣づけることは有意義である。今後は,地域での取り組みの体制づくりが課題であり,認知症の発症を少しでも遅らせる可能性が示されている。
【文献】
1) Suzuki T, et al:BMC Neurol. 2012;12:128.
【解説】
遠藤英俊