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コンパートメント(筋区画)症候群[私の治療]

No.5133 (2022年09月10日発行) P.40

大野聡一郎 (慶應義塾大学医学部救急医学教室)

登録日: 2022-09-13

最終更新日: 2022-09-06

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  • 外傷による急性コンパートメント症候群(acute compartment syndrome:ACS)では,初期評価から診断まで,および診断から筋膜切開までに最も長い時間がかかっていたことがわかっている。また,診断遅延が多く,遅れによる重大な合併症の発生が多いことも明らかになっており,いかにして早期に診断,筋膜切開を決定し,組織虚血を防ぐかが最重要ポイントである1)。ここでは適切な早期診断のための知見と,唯一の治療法である筋膜切開について述べる。

    ▶病歴聴取のポイント

    時間経過:動物実験データでは筋組織は約6~8時間,神経組織は約12時間で損傷が不可逆的となる。
    原因および受傷機転:軟部組織損傷(injury zone)の評価。

    ▶バイタルサイン・身体診察のポイント

    【バイタル】

    疼痛での頻脈などはあるかもしれないが,診断に使用できるものはない。

    【身体診察】

    伸展時痛(pain with passive stretch:PPS):初めに出現する筋区画内圧(intramuscular compartment pressure:IMCP)の上昇を示す身体所見で,該当コンパートメント内を通過する筋および連続する腱を伸展させて出現する。

    古典的5P:組織虚血が発生して時間が経過すると出現する所見である。PPSに続いて比較的早期から安静時の自発痛(pain)が出現する。その後に錯感覚(paresthesia),麻痺(paralysis),蒼白(pallor),脈拍消失(pulselessness)が出現するが,各個所見の感度は著しく低く,前述のPPSを含めて複数の所見が陽性であればoddsは上昇する2)。しかし,これらの所見がそろう頃には組織虚血は既に発生しているとも言えるため,時間的猶予はなくなる。

    初期身体所見での意思決定こそが重要:後述するIMCP測定は,実際の正確性と検査方法としての科学的根拠が確立されているものではない。診断遅延を回避するため,検査に頼りすぎず,早期の身体所見から診断し,遅滞ない筋膜切開を判断する必要がある。合併症の重篤性が明らかである以上,過剰治療となることを恐れてACSの診断が遅れることのないよう注意する。

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