嗅覚障害は,異常が生じる部位によって病態と原因が異なり,気導性・嗅神経性・中枢性に分類される。病態と治療法は単一である場合と,複数で生じている場合とがある。主な疾患としては,鼻副鼻腔疾患,感冒後嗅覚障害や外傷性嗅覚障害が挙げられる。症状としては,嗅覚低下や嗅覚脱失といった量的嗅覚障害や,異嗅症といった質的嗅覚障害をきたす。加齢による変化も認められ,嗅覚脱失は人口の約5%に存在すると言われる1)。
発症の時期・契機・発症様式や併存症状,そして変動の有無を確認する。また,既往歴・薬剤使用歴・喫煙歴・職業歴や味覚/風味障害の有無も重要な問診事項である。
中鼻道や嗅裂部の粘液分泌や粘膜浮腫・鼻茸の有無を確認する。
保険適用の検査は,T&Tオルファクトメーターを使用した基準嗅力検査と,アリナミンⓇ注射液(プロスルチアミン)を用いる静脈性嗅覚検査である。診断や治療効果判定には,自覚症状と嗅覚検査の両方にて評価を行うことが望ましい。
必要に応じて副鼻腔CTにて鼻副鼻腔疾患や嗅裂病変の有無を確認する。原因が特定できない場合,MRIにて嗅球・嗅索・頭蓋内病変の有無の確認を考慮する。いずれも冠状断が診断に有用である。
原因疾患によって治療は大きく異なるため,鑑別を行ってから疾患ごとに治療を考慮する。原因が特定できない場合は嗅神経性嗅覚障害として治療する。
慢性鼻副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎に対して,まずは点鼻・鼻洗浄などの局所治療や薬物療法を行う。滴下式点鼻ステロイドも選択肢となる。効果がなければ手術加療を考慮し,好酸球性鼻副鼻腔炎は,術後にステロイドが必要であれば,分子標的治療薬使用を検討する。
嗅神経性・中枢性嗅覚障害においては,発症早期はステロイド加療を検討し,慢性期には嗅覚刺激療法や漢方を使用する。亜鉛低下例については亜鉛製剤併用も考慮する。
※「慢性鼻副鼻腔炎」,「アレルギー性鼻炎」,「好酸球性鼻副鼻腔炎」の治療方針は各稿を参照のこと。
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