うつ病は生涯有病率5.7%とも言われる一般的な疾患である1)。DSM-52)などの操作的診断が基本となり,バイオマーカーなどは確立していない。抑うつ気分,興味・関心の低下や喜びの喪失を主症状とするが,うつ病以外の精神疾患や身体疾患でも同様の症状は起こるため,鑑別診断が重要となる。
投薬効果発現には数週間かかり,副作用が先に出る場合がある。また,自殺など重篤な転帰に至る場合がある。
DSM-5など,操作的診断基準が用いられる。
良好な医師・患者関係を構築するために,初診時に受診は本人の意思か,他人の勧めか,納得しているのかを確認する。その上で本人の困りごとを中心に,同席者にはそれを補完する形で話を聞く。
DSM-5では,①抑うつ気分,②興味・関心の低下や喜びの喪失,の2項目が主要項目であるが,①食欲の低下または亢進,②不眠または過眠,③精神運動性の焦燥または抑制,④易疲労感または気力の減退,⑤無価値観または自責感,⑥思考力の減退または決断困難,⑦希死念慮,の7項目も評価する。主要項目を含み5項目以上が毎日,2週間以上継続し,日常生活に障害をきたしている場合に抑うつエピソードと考え,うつ病を疑う。なお,抑うつエピソードの背景に身体疾患や薬物などがある可能性を十分検討する。
うつ病の可能性が高ければ,疫学,病態仮説,治療法,治療の見通しなどを説明し,患者の質問も受け,今後の治療について合意を得ておく。また,外来で治療可能なのか,希死念慮などにより緊急の入院対応が必要かを判断する。
治療の基本は休養と服薬であり,焦らずに治療できる環境を整える。診察の中で,「~せねばならない」「~にちがいない」などの考え方の癖,認知の偏りも評価する。休養,薬物療法,精神療法以外にも,運動療法や栄養指導などが行われることがある。
自殺,自傷行為,無断退職や離婚などの衝動行為には,常に十分な注意を払う。他者配慮の強い患者では,主治医に自分をよく見せようとすることもあるが,希死念慮などは十分に確認する。
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