慢性膵炎は,「遺伝的や環境要因,その他の危険因子を有し,実質への傷害やストレスに対して持続的な病的反応を生じる個人に起きる,膵臓の病的線維化炎症症候群」と定義され,病状から早期慢性膵炎,慢性膵炎準確診,慢性膵炎確診に分類される。また,膵外内分泌機能の障害の程度により,病期は潜在期,代償期,移行期,非代償期にわけられ,病期により治療法が異なる。慢性膵炎は膵癌の高リスクである。
慢性膵炎は「慢性膵炎臨床診断基準2019」1)に則り,臨床症候と特徴的な画像所見を組み合わせて診断する。症状からの拾い上げが重要であり,明らかな消化管異常のない腹痛・背部痛や,消化吸収障害としての慢性下痢・脂肪便,糖尿病などが診断のきっかけになることも少なくない。
慢性膵炎に対する主たる治療内容は,炎症軽減,疼痛管理,消化吸収障害の治療,膵性糖尿病の治療,合併症(膵石症,膵仮性囊胞等)の治療,に大別される。基本的には生活習慣の改善指導を行った上で,症状・病期に応じた栄養指導と投薬を中心とした内科的治療を行いながら,膵石や仮性囊胞などがある場合にはインターベンション治療(内視鏡治療,体外衝撃波,外科治療等)を検討する。
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