2012年のわが国における甲状腺癌罹患数は,国立がん研究センターがん対策情報センターによると1万3906人であり,放射性ヨウ素(radioactive iodine:RAI)による内照射治療が標準的治療となる分化型甲状腺癌は97%を占める。分化型甲状腺癌は比較的予後が長く,10年生存率も90%と言われているが,RAI抵抗性甲状腺癌の10年生存率は10%と報告されている。
これまでは治療の選択肢が少なく,甲状腺全摘後の治療はRAI治療が主流であったが,14年に分子標的薬が発売され,現在ではRAI抵抗性甲状腺癌の治療の標準的治療になりつつある。15年に登場したマルチキナーゼ阻害薬であるレンバチニブはRAI抵抗性分化型甲状腺癌を対象としたSEL ECT試験で,プラセボに対し無増悪生存期間(PFS)を有意に改善(18.3カ月 vs. 3.6カ月)し,奏効率は64.8%で,完全寛解が4症例報告されている1)。
レンバチニブの登場は,患者にとっては福音である。このような分子標的薬の登場は,これまで標準的治療であったRAI治療のあり方にも一石を投じている。RAI抵抗性の判断や分子標的薬の適切な導入時期の判断など,RAI治療を行う放射線治療医が果たすべき役割は大きい。現在,当科ではRAI抵抗性の基準を明確にし,分子標的薬の適切な導入時期を明らかにするためにactive surveillanceを行う前向き臨床試験を実施している(UMIN:000021757)。
【文献】
1) Schlumberger M, et al:N Engl J Med. 2015;372 (7):621-30.
【解説】
山下英臣 東京大学医学部附属病院放射線科講師