甲状腺腫瘍は良性と悪性にわけられ,良性結節には過形成結節である腺腫様結節(腺腫様甲状腺腫)と,狭義の良性腫瘍である濾胞腺腫がある。一方,悪性腫瘍は乳頭癌,濾胞癌,髄様癌,未分化癌,リンパ腫等に分類され,その90%以上が乳頭癌である。次に頻度が高いのは5%前後を占める濾胞癌である。分化型甲状腺癌である乳頭癌,濾胞癌はきわめて予後良好であるが,髄様癌の予後はこれらより低く,特に高齢者に発症する未分化癌は予後がきわめて不良である。
甲状腺腫瘍は触診で発見しうるが,結節の評価には超音波検査が必要である。Bモード画像では,腫瘍の形状,境界の明瞭性と性状,腫瘍内部エコーレベルと均質性,高エコーおよび境界部低エコー帯の評価を行い,日本乳腺甲状腺超音波医学会の基準1)に従い,穿刺吸引細胞診の実施の適否を評価する。細胞診による甲状腺癌の正診率はきわめて高いが,濾胞腺腫と濾胞癌の鑑別は困難である。血液検査ではCEA,カルシトニンの測定は髄様癌の診断に有用であるが,サイログロブリン測定による良悪性の鑑別は困難である。
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