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甲状腺低分化癌の臨床

No.5023 (2020年08月01日発行) P.47

赤石純子  (伊藤病院外科)

登録日: 2020-07-31

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【高分化癌と未分化癌との中間的形態像,生物学的態度を示す,濾胞上皮由来の悪性腫瘍】

甲状腺低分化癌は高分化癌(乳頭癌ないし濾胞癌)と未分化癌との中間的な形態像および生物学的態度を示す濾胞上皮由来の悪性腫瘍を言う。

低分化癌の概念は,1983年に坂本ら1)によって提唱され,2004年WHO分類で分化癌から独立した疾患として扱われた。15年,わが国の規約第7版ではWHO分類に準拠する形で,低分化成分(充実性,索状,島状)が腫瘍の50%を占め,乳頭癌に典型的な核所見はみられないように改変された。さらに,17年のWHO分類2)では低分化成分に加えて,脳回状核・核分裂像の増加・腫瘍壊死のうち1つを満たす基準が採用された。

低分化癌は甲状腺癌全体の約1%程度を占める稀な悪性腫瘍で,高分化癌に比べると遠隔転移の頻度は高く,予後不良と報告されている。術前診断は難しく,穿刺吸引細胞診で甲状腺分化癌が疑われて手術施行し,術後の病理組織検査で低分化癌と診断されることが少なくない。

治療は手術が第一選択で,術後に低分化癌と診断された場合には追加治療(補完全摘と放射性ヨウ素内用療法)を推奨している。進行性で放射性ヨウ素内用療法が効かない場合は,分子標的薬による治療を考慮する。稀に未分化癌に近い経過をたどることもあり,注意深い経過観察が必要である。

【文献】

1) Sakamoto A, et al:Cancer. 1983;52(10):1849-55.

2) Lloyd RV, et al, ed:WHO Classification of Tumours. 4th ed. World Health Organization, 2017.

【解説】

赤石純子 伊藤病院外科

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