甲状腺腫瘍では良悪性の鑑別が最も重要となる。わが国では「甲状腺腫瘍診療ガイドライン2018」1)や「甲状腺結節取扱い診療ガイドライン2013」2)が発行されている。甲状腺結節が発見された場合のがんの頻度は,触診で5~17%,超音波で3~8%である。また,最も頻度の高い良性結節である腺腫様甲状腺腫は病理学的診断名である。そのため,病理学的検査が未施行の場合,臨床診断名は多結節性甲状腺腫となる。
問診にて急速増大,疼痛,嗄声の有無を確認する。甲状腺未分化癌の多くで急速増大や疼痛を認める。また,息が漏れるような嗄声(気息性嗄声)を認める場合,がんの反回神経浸潤を疑うため,内視鏡で声帯運動を確認する。
甲状腺結節の画像診断には超音波検査が最も有効である。CT,MRI,FDG-PETは甲状腺癌の病期診断や手術計画には有用であるが,質的診断に用いることは推奨されない1)。機能性結節を疑う場合は123I,131Iまたは99mTcシンチグラフィーを行う。穿刺吸引細胞診は感度95~97%,特異度47~51%であり,超音波ガイド下であれば10mm以下の結節に対しても十分施行可能である。超音波検査で悪性を疑う場合や20mmを超える場合は積極的に行うべきである。この際,濾胞癌は超音波検査と細胞診から診断困難であることが少なくないこと,診断の限界から「細胞診結果が良性」と「悪性でない」は同じでないことを念頭に置いておく。
血液検査は,機能性結節を疑う場合の血中TSH測定,濾胞性腫瘍を疑う場合の血中サイログロブリン測定,髄様癌を疑う場合の血中カルシトニンおよび血中CEA測定が推奨されている1)。髄様癌ではRET遺伝学的検査も行う。
悪性には乳頭癌,濾胞癌,髄様癌,低分化癌,未分化癌,悪性リンパ腫があり,治療方針を決める前に病理学的診断を行う。最も多いのは乳頭癌で,超低リスク(T1aN0M0),低リスク(T1bN0M0),中リスク(超低・低・高リスクのいずれにも該当しない),高リスク(T>4cm,Ex2またはsN-Ex,径が3cmを超えるN1,M1のうち1項目以上を満たす)に分類される1)。
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