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多発性内分泌腫瘍症1型(MEN1)[私の治療]

No.5199 (2023年12月16日発行) P.51

森實千種 (国立がん研究センター希少がんセンター/同センター中央病院肝胆膵内科医長)

登録日: 2023-12-18

最終更新日: 2023-12-12

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  • 多発性内分泌腫瘍症1型(multiple endocrine neoplasia type 1:MEN1)は,副甲状腺機能亢進症,下垂体腺腫,膵・消化管神経内分泌腫瘍が三大病変であり,ほかに副腎や皮膚,胸腺などにも腫瘍が発生する。がん抑制遺伝子であるMEN1遺伝子が原因遺伝子で,常染色体顕性(優性)遺伝の形式で遺伝する。

    ▶診断のポイント

    MEN1で最も多い臨床的特徴は,副甲状腺機能亢進症に伴う副甲状腺ホルモン上昇と高カルシウム血症である。そのため膵腫瘍や下垂体腺腫を認める患者で,尿路結石の既往がある患者や高カルシウム血症を認める場合,積極的にこの病態を疑う。膵神経内分泌腫瘍の患者においては必ず家族歴の聴取,尿路結石などの既往,血清カルシウム濃度の確認を行う。膵神経内分泌腫瘍の4~10%にMEN1を伴うとされる。ガストリノーマ(特に十二指腸原発)や若年者のインスリノーマに合併しやすい。また,MEN1の神経内分泌腫瘍は多発病変を示すことが多い。MEN1が疑われる場合は,患者の希望なども考慮の上,遺伝外来などへ紹介し,生殖細胞系列の病的バリアントの確定診断および血縁者へのシングルサイト検査などを相談する。また,原発性副甲状腺機能亢進症(アルブミン補正血清カルシウム,血清リン,インタクトPTH),下垂体腫瘍(血清プロラクチン,下垂体MRI)の検索も進める。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    治療方針は,副甲状腺機能亢進症(特に高カルシウム血症)の治療,神経内分泌腫瘍の治療,下垂体腺腫への対応(それにより分泌されるプロラクチン,成長ホルモン,ACTHへの対応)に大別される。

    副甲状腺機能亢進症への対応は,手術による摘出および自家移植(4腺すべてを摘出し,1腺の一部を非利き腕の前腕に自家移植)が適応となる。手術ができない例,再発例などに関してはカルシウム受容体作動薬(シナカルセトなど)も考慮される。

    神経内分泌腫瘍への対応は,腫瘍が分泌するホルモン(インスリン,ガストリンなど)への治療および腫瘍の切除や抗悪性腫瘍薬などがある。MEN1における神経内分泌腫瘍は多発病変・小病変の場合が多く,異時性発生が多いなどの特徴があり,散発性神経内分泌腫瘍とも切除適応や方針が異なる。

    下垂体腺腫は産生ホルモンにより対応が異なる(プロラクチノーマ:カベルゴリンなどのドパミン作動薬,経蝶形骨洞手術・放射線治療,成長ホルモン:経蝶形骨洞手術,ソマトスタチンアナログなど)。

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