良性の甲状腺結節の中で,頻度が高いものは腺腫様甲状腺腫である。これは病理診断名であり,過形成や変性,囊胞形成,石灰化などが混在するものであって,病理学的には腫瘍ではない。結節が多発することが多く,臨床診断としては非機能性多結節性甲状腺腫と記載されることもある。単発の場合は腺腫様結節,非機能性単結節性甲状腺腫となる。一方,良性腫瘍のほとんどは濾胞腺腫である。囊胞もよくみられる所見であるが,大部分は濾胞腺腫や腺腫様甲状腺腫から囊胞形成に至ったものと考えられる。
表題は良性腫瘍であるが,甲状腺の良性結節全般について述べる。
近年は頸部の腫れを自覚して受診する例以上に,検診等の超音波検査や胸部CT,あるいはポジトロン断層法(positron emission tomography:PET)検診で甲状腺の異常を指摘されて受診する例が多い。
視診,触診で甲状腺に結節があるかどうか確認する。甲状腺の結節であれば,嚥下運動させたときに気管とともに上下に動く。次に超音波検査で結節の有無を確認し,超音波所見から悪性の可能性を除外する。悪性の疑いがある場合,結節径が2cm以上の場合などは穿刺吸引細胞診を考慮する。血液検査では甲状腺刺激ホルモン(thyroid stimulating hormone:TSH),遊離サイロキシン(free thyroxine:FT4)の測定が必須である。TSHが抑制されている場合は過機能結節,結節以外にTSHが抑制される疾患の合併を診断するために核医学的検査が適応である。また,良性と思われても気管を圧迫したり縦隔に進展するような大きな結節では,CTでの評価が必要である。
超音波検査で形状整,充実性で内部エコーがほぼ均質で等エコーレベルに描出される結節は濾胞性腫瘍が最も疑われるが,超音波所見に基づいて濾胞癌と濾胞腺腫とを鑑別することは困難なことが多い。一見良性のようにみえる濾胞癌があるので,注意が必要である。
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