厚生労働省は11月17日の社会保障審議会医療保険部会に、後期高齢者の保険料負担などに関する見直し案を提示した。現役世代の負担の抑制と高齢者世代内での負担の公平化を図るため、後期高齢者の中でも負担能力がある者の保険料や保険料賦課限度額の引き上げを行うとした。
後期高齢者の負担率(高齢者が保険料で賄う割合)は2年ごとに見直され、その際には現役世代の減少に伴う現役世代1人当たりの後期高齢者支援金負担の増加分を、後期高齢者と現役世代で折半するように負担率が設定される。現役世代の負担抑制を狙った仕組みだが、▶実際には現役世代1人当たりの後期高齢者支援金額の伸び率が、後期高齢者1人当たりの保険料の伸び率を上回る、▶現役世代の減少のみに着目した制度設計のため、今後の高齢者人口の減少局面では高齢者負担率が上昇し続けることになる―などの課題もある。
これに対して介護保険制度は、第1号被保険者(65歳以上)と第2号被保険者(40~64歳)の人口比に応じた負担割合の見直しを3年ごとに実施することで、両者の1人当たり保険料負担額がおおむね等しくなっている。そこで厚労省は2024年以降の後期高齢者負担率について、介護保険を参考に、後期高齢者1人当たり保険料と現役世代1人当たり後期高齢者支援金の伸び率が同じになるよう、設定方法を見直すことを提案した。
これと同時に高齢者世代内において能力に応じた負担を強化する見直しも行う。具体的には、保険料を構成する均等割(被保険者全員が等しく負担)と所得割(所得に応じて負担)のうち、所得割率を引き上げるとともに、現在は年額66万円の保険料賦課限度額を年額80万円に引き上げる案を示した。
厚労省の試算によると、これらの制度改正による財政影響は24年度・満年度ベースで、▶協会けんぽ300億円減、▶健保組合290億円減、▶共済組合等100億円減、▶国保80億円減、▶後期高齢者820億円増。加入者1人当たり保険料への影響額は、▶協会けんぽ800円減、▶健保組合1000円減、▶共済組合等1100円減、▶国保300円減、▶後期高齢者4000円増―になるという。