【質問者】
辻 一郎 東北大学大学院医学系研究科公衆衛生学分野 教授
【社会の変化は,産業医の職務においても多様化を求めている】
わが国の人口の高齢化は,人財不足,労働生産性の低下など,企業に深刻な影響を及ぼし,労働者の安全と健康対策は従来にも増して重要性を増しています。加齢は避けることはできませんが,生理的年齢を若く,つまり健康と業務遂行能力を高齢期においても維持することは可能となってきました。そのためには,入社した時から継続した健康づくり事業を経営戦略として実施することが必要不可欠となっています。
産業医は準委任契約に基づいてその専門的職務を果たすことになりますが,現在では,産業医の経営的機能も期待されています。つまり,現状の健康問題の解決のみならず,事業継続に必要な将来への健康投資に関わる企画立案やその実施について専門的立場からの参画が求められるようになりました。事業者の義務としての法定の健康診断と事後措置等の健康管理,努力義務としてのTHP(Total Health promotion Plan)における「心とからだの健康づくり」などから,さらに企業未来への投資として長期展望に立脚した継続的な健康づくり事業推進の一員として,その専門知識を生かして役割を担うことになります。
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