中咽頭は解剖学的に嚥下,音声に関わる重要な部位であり,前壁(舌根),側壁(扁桃),上壁(軟口蓋),後壁,の4つの亜部位にわけられる。中咽頭癌発症のリスクファクターとして,従来から指摘されている喫煙,飲酒に加えてハイリスク型human papilloma virus(HPV)感染の関与が明らかになっている。近年はHPV陽性癌の増加が世界的に顕著である。
HPV陽性癌と陰性癌では病態が異なる。HPV陽性癌は,主に側壁,前壁に発生し若い年齢層に多い。一方HPV陰性癌は,すべての亜部位において発症する。また,HPV陰性癌では,field癌化の影響で他の頭頸部領域や食道,肺などを含めた重複癌が多いのが特徴である。
初期には,咽頭違和感などの軽微な自覚症状しか有しないことが多い。進行すると嚥下時痛,構音障害,耳周囲への放散痛,開口障害,唾液への血液混入などが出現する。リンパ節転移をきたした結果,頸部腫脹を自覚する場合も少なくない。
病変は経口的に視認できる場合もあるが,咽喉頭内視鏡検査を経口的,経鼻的に行った上で,進展範囲を確認する必要がある。組織学的に扁平上皮癌が多くを占めており,腫瘍からの組織生検によって確定診断を得ることができる。
なお,2017年にUICCのTNM病期分類が改訂され,中咽頭癌ではHPVの代用マーカーであるp16免疫染色結果に応じて,p16陽性癌と陰性癌で別々の分類を用いることとなった。したがって,従来のHE染色に基づいた病理組織診断に加えて,免疫組織染色でp16発現の有無を確認する必要がある。
進展度(病期診断)を確認するためには造影CT,MRI,頸部超音波検査,PET-CTを行う。また,重複癌の有無を確認するために,上部消化管内視鏡による食道,胃などのスクリーニング検査を行う。
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