No.4825 (2016年10月15日発行) P.73
仲野 徹 (大阪大学病理学教授)
登録日: 2016-10-14
最終更新日: 2016-10-18
ノーベル賞の事前取材、今年は例年以上にたくさん受けた。画期的ながん免疫療法の開発で京都大学の本庶 佑先生が有力候補になっておられるので、昔の弟子からコメントを、という訳だ。毎年のことながら、マスコミ各社はご苦労なことである。
そんなこともあって興味津々。発表日は文科省関係での会議の後、そのまま飲み会に突入。そこで大隅良典先生のご受賞を知った。分野は少し違うのだが、何度かお目にかかったことがあるし、遅くまで一緒に飲ませてもらったこともある。もちろん、飲み会の出席者全員で祝杯をあげた。
季刊「生命誌」にある大隅先生の『自分を食べて生き残る細胞に魅せられて』がとてもいい(http://brh.co.jp/s_library/inter view /62/)。「人のやらないことをやり、競争をしないで独自のものを出すという私のサイエンスのスタイル」などというお言葉には、心の底からしびれまくりだ。
高弟である大阪大学特別教授の吉森 保さんによると、大隅先生はノーベル賞そのものにあまり関心はないが、基礎研究の大事さを国にアピールできるのなら貰いたいと言っておられたそうだ。現在のような、流行の分野ばかりが注目され、応用研究が過度に重視される風潮、競争が厳しすぎる状況に危機感を持っておられるのだろう。
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