オウム病は,Chlamydia psittaciによる人獣共通感染症である。トリの排泄物に含まれる病原体を吸入して5~14日間の潜伏期間を経て,発熱,乾性咳嗽,頭痛,全身倦怠,筋肉痛,関節痛等のインフルエンザ様症状で発症するが,肺炎を呈する場合と,呼吸器症状を欠如して敗血症様症状を呈する場合がある。軽症例から,広範な肺炎を発症し播種性血管内凝固症候群(DIC)や急性呼吸促迫症候群(ARDS),多臓器不全(MOF)を合併する重症例までがみられる1)。
トリとの接触の聴取が最も重要である。特に飼育鳥が死亡している場合には疑いが強くなる。
肺炎を呈する場合は,非定型肺炎を疑う所見(白血球数正常,膿性痰欠如,βラクタム薬無効など)がみられる。日本呼吸器学会「成人肺炎診療ガイドライン2017」の細菌性肺炎と非定型肺炎の鑑別診断基準2)が参考となる。
診断は,血清診断が主体となる。補体結合反応(CF)は属特異性であるため,種特異的なmicro-IF法が用いられることが多い。ペア血清で4倍以上のIgG抗体上昇またはシングル血清でIgM抗体上昇の場合に有意とされる。
血清診断には判明に日数を要するので,トリとの接触が疑われる例では,本症疑いとしてエンピリックに治療を開始する。
Chlamydia属は,偏性細胞内寄生性微生物であり,細胞内に封入体を形成して増殖する。細胞壁にペプチドグリカンを欠如するため,ペニシリン系やセファロスポリン系のβラクタム系抗菌薬は無効であり,テトラサイクリン系薬が第一選択薬で,マクロライド系薬が第二選択薬となる。ニューキノロン系薬も有効であるが,オウム病には保険適用がないものが多い。幼小児や妊婦にはマクロライド系抗菌薬を用いる。
抗菌薬の投与期間は除菌を考慮して2週間が勧められる。症状が改善すれば,注射薬から同系統の内服薬に変更(スイッチング)も可能である。
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