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扁平足(成人期)[私の治療]

No.5149 (2022年12月31日発行) P.48

仁木久照 (聖マリアンナ医科大学整形外科学講座主任教授)

登録日: 2022-12-30

最終更新日: 2022-12-26

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  • これまで扁平足は,足アーチ構造が破綻し土踏まずが消失する変形と定義されてきた。しかし,実際に生じている足根骨の位置異常は単純な2次元的変化では表せない。バネ靱帯の異常から変形が進展し,①後足部外反,②中・前足部外転,③前足部内反,の変形要素からなる3次元的変形である。したがって,後脛骨筋腱機能不全(PTTD)や成人期扁平足といった名称では病態を正確に反映しているとは言い難く,2020年,Progressive Collapsing Foot Deformity(PCFD)1)という名称が提唱された。バネ靱帯に異常をきたす病態として,primary tearや外脛骨障害のように直接バネ靱帯が断裂する一次性断裂と,後脛骨筋腱断裂(変性断裂をきたす狭義のPTTDに加え,関節リウマチ,os subtibiale,外傷による腱断裂)によりバネ靱帯に負荷が生じ二次的に断裂する二次性断裂,に大別できる2) 。中年期以降の女性に多い3)

    ▶診断のポイント

    【症状】

    疼痛は安静で軽快,立位や歩行で増強する。立位で患側の踵骨は外反し,中・前足部が外転するので,後方からの観察で患側の外側趾の数が多く見える(too many toes sign)。片脚つま先立ちでは,踵骨は外がえしのままで完全に離床できない(single heel rise test陽性)。

    【検査所見】

    腱やバネ靱帯断裂の確定診断にはMRIが有用である。超音波検査は動的な評価が可能だが,質的診断は困難である。変形の重症度は荷重時単純X線正面像,側面像,後足部撮影で評価する。

    【鑑別を要する疾患】

    関節自体が破壊され足根骨の位置異常をきたす疾患との鑑別が必要となる。変形性関節症(距舟関節,Lisfranc関節),関節リウマチ中足部(距舟関節)病変,骨関節外傷(踵骨骨折),神経病性関節症,神経麻痺(脳性麻痺,ポリオ),足部腫瘍である。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    まず変形要素(class)と可撓性(stage)を評価する。変形要素は,class A:後足部外反,class B:中・前足部外転,class C:前足部内反+内側支柱不安定性,class D:距骨周囲亜脱臼/脱臼,class E:足関節不安定性(距骨外反),の5つ,可撓性は,stage I:flexible(徒手的に変形矯正可能)とstage Ⅱ:rigid(徒手的な矯正不可),の2つ,を組み合わせて分類する1)。さらに荷重時X線による変形の程度,MRIによる腱やバネ靱帯断裂の有無を評価し,治療方針を立てる。

    重度変形例では下腿三頭筋~アキレス腱のtightnessを必ず伴う。徒手的に変形を矯正したまま膝屈曲・伸展位で足関節を背屈しtibio-pedal angleを計測,背屈角度で腓腹筋腱膜切離かアキレス腱延長の適応を判断する。

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