術後再建腸管に対する内視鏡的逆行性胆道膵管造影(ERCP)は,解剖学的に困難な手技とされてきた。特にRoux-en-Y再建例ではVater乳頭までの距離が長いため,通常の内視鏡では到達が難しい。さらに,乳頭の位置関係が通常のERCPと異なるため,胆管への挿管も困難とされている。
最近ではバルーン内視鏡が登場し,胃切除術後のRoux-en-Y再建例や膵頭十二指腸切除術後再建例などに行うERCPにおいて,Vater乳頭や吻合部までの挿入率が飛躍的に向上した。バルーン内視鏡は本来,小腸内視鏡として使用されているが,従来のバルーン内視鏡では有効長が200cmを超えていたため,ERCPで使用できる処置具が限られていた。しかし,有効長が152cmの治療用の短い小腸内視鏡が開発されたため,通常のERCPで使用できる処置具の大部分が使用可能となり,近年は鉗子口径が3.2mmの内視鏡も市販され,閉塞性黄疸や結石除去での使用処置具の選択肢がさらに広がった。
近年では術後再建例に対して,超音波内視鏡(EUS)下治療の有用性が報告されている1)。残胃や挙上空腸からEUSガイド下に肝内胆管を穿刺し,乳頭部を越えて消化管内へとガイドワイヤーを誘導し,順行性に総胆管結石の除去などを行う手技である。この方法は今後さらに発展が期待されるが,手技難易度も高いため,十分安全に注意した上で治療方法を選択するべきである。
【文献】
1) Wilson JA, et al:Gastrointest Endosc. 2010;72 (5):947-53.
【解説】
1)岩田恵典,2)西口修平 兵庫医科大学肝・胆・膵科 1)講師 2)主任教授