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災害時の医療用麻薬の取り扱いと緩和ケア 【被害や避難により服薬継続が絶たれるケースを想定したシステム構築が求められる】

No.4825 (2016年10月15日発行) P.54

渡邊清高 (帝京大学内科学講座腫瘍内科准教授)

登録日: 2016-10-14

最終更新日: 2016-10-14

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2011年3月に発生した東日本大震災では,広域にわたる医療機関および行政機関の損壊により診療や支援機能が障害された。近年,がん患者は外来での通院や在宅での療養下で生活を維持していることから,ひとたび災害が発生すれば,医療依存度の高いがん患者においては,医療・看護・介護のニーズは増大する。

「医療用麻薬の処方を受け取れなかった」「処方通りの適正な量の医療用麻薬を内服していなかった」など,津波被害や避難により内服薬を喪失した患者の服薬継続への障害が報告されている1)。被災地域の医療用麻薬の不足に対応するため,地域外からの譲り受けを所定の手続きのもとで可能にする対応がなされた2)。地域の看護・介護サービスの不足や連携に必要なインフラが障害されることにより医療支援が十分受けられない事例もある一方で,被災した医療者自身が緩和ケアへ従事することの心理的負担も指摘された。

がん患者の療養上の配慮や環境整備に加え,薬剤情報の保管体制,災害時の医薬品の確保と流通経路の確認,患者自身の緊急医療情報キット(病名,薬剤,緊急連絡先を記載して冷蔵庫などに保管し,玄関にも掲示する)の活用,医療従事者の安全確保と心のケアの必要性が指摘されている。

【文献】

1)「がん緩和・在宅医療における東日本大震災の経験を生かした東南海地震への備え」に関する研究ワーキングチーム:現場力を上げるために東日本大震災の体験を知る. 青海社, 2014.

2) 厚生労働省:平成23年東北地方太平洋沖地震における医療用麻薬の県境移動の取扱いについて(卸売業者,医療機関及び薬局への周知依頼). 2011.

【解説】

渡邊清高 帝京大学内科学講座腫瘍内科准教授

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