著: | 稲田英一(順天堂大学名誉教授、地方独立行政法人東京都立病院機構 東京都立東部地域病院病院長) |
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判型: | A5判 |
頁数: | 256頁 |
装丁: | 2色刷 |
発行日: | 2022年09月19日 |
ISBN: | 978-4-7849-6299-0 |
版数: | 第1版 |
付録: | 無料の電子版が付属(巻末のシリアルコードを登録すると、本書の全ページを閲覧できます) |
診療科: | 麻酔・ペインクリニック | 麻酔・ペインクリニック |
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1章 気道・呼吸管理
CASE1 どうして下がるの?【COPD】
CASE2 あっ、顔がない!【外傷】
CASE3 血痰が続いているのですが…【合併症】
CASE4 意識清明なのに喋れない!【合併症】
CASE5 重すぎたのね!【内分泌外科】
2章 薬物
CASE6 えっ、2ミリって言ったのに!【医療安全】
CASE7 えっ、漏れてる!【合併症】
CASE8 真っ赤になりました!【副作用】
CASE9 麻酔を深くしたはずなのに!【副作用】
CASE10 減った、飛んだ!【副作用】
CASE11 マオ何とかを服用してるんですが。【薬物相互作用】
CASE12 迅速導入のはずなのに!【薬物相互作用】
CASE13 なんで上がるの?【吸入麻酔薬】
CASE14 えっ、アドレナリンに反応しない低血圧なんてあり!?【稀な疾患】
3章 モニタリング
CASE15 ベローズが上がってこないんですが…。【呼吸】
CASE16 カプノが出ない!【医療機器、麻酔器】
CASE17 えっ、ないの?【合併症】
CASE18 もっと血圧を下げてくれ!【循環】
CASE19 波形が出ないみたいなんですが…【循環】
CASE20 血が引けてくるんですが…【循環】
CASE21 拡張期血圧が上がって、脈圧が小さくなってきた!【循環】
CASE22 えっ、STがこんなに下がっている!【循環】
CASE23 穴が塞がっていない!【循環】
CASE24 つぶれてしまったものは…【神経】
CASE25 スガマデクスを投与したのに自発呼吸が出てこない!【神経筋】
CASE26 カテーテルが抜けません!【心臓血管手術、ICU】
4章 輸血
CASE27 肺が真っ白!【副反応】
CASE28 あぁ、痒くなってきた!【副反応】
CASE29 輸血は絶対No!【エホバの証人】
CASE30 これは医療ネグレクトです!【エホバの証人】
CASE31 型が違うんですけれど…【異型適合血】
CASE32 これ使っても大丈夫?【緊急輸血】
5章 区域麻酔
CASE33 漏れちゃうんです!【合併症】
CASE34 どうして起きてくれないの!【合併症】
CASE35 硬膜外鎮痛しているのに背中が痛い?【合併症】
CASE36 あのー、おしりに痛みが続くんですけど。【合併症】
CASE37 あっ、止まった!【合併症】
CASE38 あっ、先がない!【合併症】
CASE39 赤いものが引けてくるんですが…。【合併症】
CASE40 あれっ、引けなくなった!【テクニック】
6章 合併症
CASE41 あのー、小指の感覚がないんですけど。【医療安全】
CASE42 悲しくないのに涙が出ちゃう!【角膜剥離】
CASE43 目が見えない!【視覚喪失】
CASE44 あっ、STが上がってきた!【循環】
7章 心臓血管外科麻酔
CASE45 このT波って大丈夫?【合併症】
CASE46 あぁ、胸がきつくて!【合併症】
CASE47 こんな血行動態でICUに患者を送ったら怖い看護師さんに睨まれる!【循環管理】
CASE48 そこはダメよ!【小児】
CASE49 スペルが起きた!【小児】
CASE50 下肢が蒼白!【動脈塞栓症】
CASE51 腫瘍が消えた!?【粘液腫】
CASE52 本当にこんな血圧かなぁ?【モニタリング】
CASE53 なんで痙攣してるの?【薬物】
8章 脳神経外科麻酔
CASE54 わっ、破れた!【合併症】
CASE55 だから嫌だって言ったのに!【空気塞栓症】
CASE56 いきなりグンと血圧上昇!【循環】
CASE57 腹ふくるるわざなり!【椎間板ヘルニア手術】
9章 呼吸器外科の麻酔
CASE58 だだ洩れ!【合併症】
CASE59 あっ、穴が開いてたみたい!【合併症】
CASE60 ヒューヒューいってる!【気道管理】
CASE61 覚めない!動かない!【区域麻酔、合併症】
10章 産科麻酔
CASE62 しっかり左によけて!【心肺蘇生】
CASE63 なんで動かないの!【薬物相互作用】
CASE64 えっ、泣かない!【合併症】
11章 小児麻酔
CASE65 えっ、飲んじゃったの?【医療安全】
CASE66 息をしていないみたいなんですが!【呼吸管理】
CASE67 換気すればするほど…【テクニック、合併症】
CASE68 麻酔のせいなんじゃないの!【薬物】
12章 耳鼻咽喉科手術の麻酔
CASE69 えっ、抜けちゃった?【気道・呼吸管理】
CASE70 息が苦しいんですが…【気道・呼吸管理】
CASE71 ボタンが消えた!【気道異物】
13章 眼科麻酔
CASE72 あれっ、次のQRS complexは?【合併症】
CASE73 眼が飛び出そうなんですが!【緊急手術】
CASE74 居て良かったぁ!【球後神経ブロック】
14章 緊急手術の麻酔
CASE75 先生、悪性高熱ですー!【合併症】
CASE76 区域麻酔中の突然の痙攣!【低血糖】
CASE77 何かが飛んだ!【合併症】
15章 ICU
CASE78 犯人は誰だ?【合併症】
CASE79 換気できてる?【気道管理】
CASE80 タイミングが合ってないみたいだけど【機器】
CASE81 術後に尿が出ないんですが【腎機能障害】
CASE82 もう、おなかいっぱい!【合併症】
16章 ペインクリニック
CASE83 あのとき、ビビっときたのよ!【合併症】
CASE84 えっ、いきなり!【星状神経節ブロック】
17章 災害
CASE85 あっ、燃えてる!【火災】
CASE86 足を切らないでぇ!【救急】
CASE87 急に暗くなったけど!【停電】
CASE88 揺れてる〜!【地震】
危機管理パール集
索引
本書は前作である『麻酔への知的アプローチ 口頭試問問題集』と並行して書き進めたものである。口頭試問問題集は、術前評価と管理、麻酔管理、術後管理、危機管理という基本構成となっている。しかし、自分自身がこれまで経験したり、同僚が経験したりした危機的な状況について伝えきれないと感じていた。麻酔科医にとって、術前評価をしっかりと行い、麻酔法や周術期管理について準備し、危機的状況にも対応できるようにしておくことは極めて重要なことである。予測していれば、危機的状況を事前に回避したり、的確に対応することも可能である。それでも、危機的状況に陥ることもある。予測していなかった危機的状況が起こることもある。本書は、予測された危機的状況に対応するためだけでなく、予測できなかった事態(いわゆる予測不能の事態)を、少しでも減らすために書いたものである。紙上のシミュレーショントレーニングと言ってもよい。試験対策にはもちろん、日常臨床でもおおいに役立つものと考えている。
危機的状況が起きた際の当時の緊迫した空気を感じ、だんだんと低音になっていくパルスオキシメータの音、ゆっくりになっていく心電図のビープ音、アラーム音、あふれ出てくる血液とその臭い、同僚や外科医との興奮したやり取りなどを思い出しながら本書を書いていた。自分で解決できず、同僚や指導者の助けを借りて危機的状況から抜け出たことも多い。危機的状況から抜け出せず、心停止などに至ったこともある。次は絶対同じことを起こさないという思いで日常臨床に臨んでいた。思えば、本書は私が関与した何万人という患者さんや、共に働いた何百人という同僚から学んだ宝物である。低酸素血症や、換気不全、無呼吸、高度の低血圧や高血圧、危機的出血、冠動脈スパズム、心停止、新生児の蘇生など一刻の猶予もない危機的状況などのほか、硬膜外膿瘍や挫滅症候群に対する対応、腹部コンパートメント症候群など対応に時間的余裕がややあるもの、宗教的輸血拒否や、絶飲食時間を守らなかった患者への対応など術前からの問題にかかわるもの、薬物や輸血の副作用や、馬尾症候群や一過性神経症状など区域麻酔の合併症、モニタリングにまつわる問題、地震や手術室における火災対策など88の危機的エピソードを集めてある。
私の苦い経験や成功談が、少しでも多くの患者を危機的状況から救うことに繋がればと願っている。