外耳道は外側1/2が軟骨部外耳道,鼓膜に近い内側1/2が骨部外耳道とわかれている。鼓膜,骨部外耳道は1日0.2mm程度皮膚が外側に移動する自浄作用を有している。そのため,骨部外耳道で発生した落屑物は少しずつ外側に運ばれ,軟骨部外耳道に到達する。軟骨部外耳道には皮脂腺,耳垢腺が存在し,移動してきた落屑物と腺からの分泌物が混じり耳垢となる。耳垢のタイプは遺伝的に乾性耳垢と湿性耳垢にわかれ,日本人は乾性耳垢が多い。自浄作用があるため,耳掃除は手前1/2の軟骨部外耳道を月に1回程度行えば十分であるが,自浄作用の低下や耳垢を奥に押し込んでしまうことで耳垢栓塞が起こることがある。
耳垢がある程度外耳道に堆積しても,小さな隙間があれば難聴を生じることはなく,ほぼ無症状である。耳垢により外耳道が完全に閉塞した場合は難聴が生じるため,完全に閉塞した瞬間に急に聞こえが悪くなる急性難聴を訴えて受診することも多い。湿性耳垢や,加齢性変化,耳掃除のやりすぎなどに伴う外耳道炎で自浄作用が低下すると耳垢栓塞が生じやすくなる。過去に耳垢栓塞を生じた人は繰り返し生じることがあるため,病歴の聴取も大切である。外耳道がS字状に弯曲していることを意識し,観察時には耳介を後上方に牽引した上で,耳鏡,顕微鏡を用いての観察が望ましい。耳垢栓塞と思われた症例では,異物があったり,また耳漏が固まっている場合,外耳道骨にびらん,欠損があり外耳道真珠腫を生じていることもあるため,注意を要する。
残り779文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する