急性胆管炎は,胆汁うっ滞に細菌感染が生じた病態である。肝臓で生成された胆汁は胆管に流れ込み,小腸に放出され消化を補助した後,便として排泄される。しかし,胆管閉塞によってこの経路が働かなくなると,上昇した胆管内圧により胆汁は血中に流入し,腎から排泄されるようになる。血液中で増加したビリルビンにより黄疸を呈し,胆汁酸により瘙痒感を生じる。また,胆汁中の細菌により菌血症となり,敗血症となる場合もある。原因疾患で最も多いものは総胆管結石である。悪性腫瘍に伴う閉塞性黄疸では,乳頭機能が保たれるために胆管炎は多くない。留置された胆管ステントの閉塞による胆管炎は,よく経験されるところである。
右上腹部痛,黄疸,悪寒戦慄を伴う発熱(菌血症を反映)が特徴的であるが,敗血症に陥るとショックや意識障害を伴うようになる。
胆汁うっ滞性肝障害・閉塞性黄疸(肝胆道系酵素上昇,ビリルビン上昇),炎症所見(WBC,CRP,プロカルシトニンの上昇)。
胆管拡張が主な所見で,肝細胞性黄疸との鑑別に有用である。また,結石や悪性腫瘍のような胆汁うっ滞の原因の検索も画像診断の大きな役割である。
急性胆管炎の治療の基本は,入院の上,絶食・補液しながらの全身管理と,胆道ドレナージおよび抗菌薬投与である。ガイドラインに従い,重症度に合わせた治療が計画される。
軽症例で,症状が軽く,全身状態が保たれている場合は,経口抗菌薬を投与し,外来で経過をみながら原因検索を行うが,重症化の可能性があることを説明し,その際には緊急で来院するように指導する。
胆道ドレナージは,重症度に合わせたタイミングで施行する。重症では緊急,中等症では12時間以内,軽症では待機的に行うが,当科では重症化を懸念し軽症例でも速やかなドレナージを施行している。
重症胆管炎・敗血症では,厳重な全身管理と緊急の胆管ドレナージが必要で,ICUでの治療が必要となることもある。当該施設で対応できないときには,他院への搬送を検討する。内視鏡的ドレナージを基本とし,内視鏡が難しい例では経皮的な胆道ドレナージを考慮する。
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