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[スペシャル対談]開業医の舞台裏─成功するための秘訣は?(仲野 徹×松永正訓)

No.5157 (2023年02月25日発行) P.14

登録日: 2023-02-21

最終更新日: 2023-02-21

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医師・医療従事者向け動画配信サービス「Web医事新報チャンネル」(www.jmedj.co.jp/movie/)では2月16日より、仲野徹氏(阪大名誉教授)と松永正訓氏(松永クリニック小児科・小児外科院長)によるスペシャル対談「もっと聞きたい!開業医の舞台裏」(全4回)を配信しています。開業医の舞台裏を赤裸々に描いた松永氏の新刊『患者が知らない開業医の本音』をベースに、大学病院の世界と開業医の世界の違いなどについて突っ込んだトークを繰り広げた本対談。ここでは、どうすれば開業医として成功できるかを考察したパート(Chapter 4)を中心に見どころをダイジェストでお届けします。(対談は1月25日に収録しました)

トントン拍子でいったクリニック開業

仲野 先生は研究だけでなく開業もトントン拍子でいかれたような感じがありますよね。

松永 確かに1年目から患者さんがたくさん来てくれました。(開業した地域は)小児科過疎地帯ではなかったのですが、5月に開業して、7月、8月、9月と患者さんがどんどん増えて混雑するようになりました。何がよかったのか、自分ではさっぱりわからないですね。

仲野 場所決めやコンサルタント(の選定)もすごくいい感じでされている。(他の開業医からは)「コンサルタントにぼったくられた」という話も時々聞くことがあるんですけど。

松永 ありますよね。

仲野 ぼったくられたというか、マージンが決まっているから「あれもしなさい、これもしなさい」と言われて過剰投資になったという話は時々耳にします。

松永 僕のコンサルタントは、お金を貸してくれた会社の人がコンサルタントだった。

仲野 回収できなかったら困るわけか。

松永 僕が失敗したらこげついてしまうから、そのコンサルタントは絶対に信用できるわけです。

仲野 そういうところに頼めばいいわけですね。

開業医が失敗しないのは「開業したから」

仲野 (開業を考えている医師に対して)「良い業者さんを選ぶ」以外にアドバイスはありますか。

松永 アドバイスできるほどのことは僕の中にはないのですが、僕が開業する時に手伝ってくれた業者さんが「自分はいろいろな医師の開業を支援したけれど、開業医として失敗した人を1人も見たことがない」と言ったんですよ。

仲野 本にも書いておられましたね。それはちょっと意外でした。

松永 「なんでだろうな」と思いながら一生懸命日々診療をしていて、ある時気づいたんです。開業医が失敗しない理由は「開業したから」だと。

開業するということは、大学病院など自分が勤めていた病院の勤務医を辞めるということですから、「寄らば大樹の陰」を捨てるということなんですね。独立独歩で生きていくという独立心のある人は、そもそも開業すれば成功する人なのかなと思う。勤務医の先生が「開業したい」と思ったら、その時点で成功が始まっていると思うんです。

僕の友達にもいろいろな人がいます。大学病院に勤めているけれど、将来教授になる気はなくて、「キャリアを大学病院で終わりたいとは全く思わない。だけど、開業医なんかとても自分にはできない」と言っている人もいます。かと思うと、まだ研修医なのに「将来の夢は開業です」と言う人もいる。

「開業したい」と若い頃から思っている人は、やはり独立独歩で自分の城を構えてみたいと思っている人なんですね。そういう心構えがあれば、その時点で50%は成功していると思うんです。変なコンサルタントには引っかからないようにして、開業して成功した先輩にいろいろなことを教えてもらいつつしっかりやれば、「開業したい」と思った時点で半分は成功。努力を惜しまなければ100%うまくいくと思います。

メンタリティに加え「修行」も必要

仲野 若くして開業した人って、わりと成功している人が多いのはそれがあるのかもしれないですね。若かったからいいのではなくて、若い時から独立したいと思うメンタリティが大きいのかも。

松永 そういう意味ではメンタリティですね。しかし、ある程度の修行は絶対必要。大学病院はいろいろ批判される。僕も批判しますし、いまだに「白い巨塔」の体質があってそういうところが批判されてしまう。だけど、僕がそこで学んだことはものすごくたくさんあるんです。

理不尽なことをいっぱい言われたし、パワハラみたいなことが日常的にあったけれど、そういう(厳しい労働環境の)中で学んだことは多い。先輩から学ぶというより患者から学ぶわけですけれど。「とにかく患者のそばにいろ」などと言われて。

仲野 昔はそうでしたね。「一晩中寝ずに、何もなくてもじっと見ているのが勉強や」と。それは勉強にならへんやろなと思いながらも、ウォッチせなあかんようなことが結構ありました。

松永 僕も2カ月半病院に泊まったことがあります。労働基準法も何もない、滅茶苦茶な働き方でしたけれど、その中で身につけたものがものすごくある。それが自分の医者としての基盤になっています。若いうちはそういう馬力があるから、苦労を買ってでもしたほうがいい。と言うとこれがまた今の時代はパワハラになる(笑)。

仲野 もう駄目ですね(笑)。強制したらアウトですけど、自発的にやっていただくのは別にかまいません。

若い人があまり働かなくなっているのはもったいないと思いますよね。トレーニングする体力があって働ける時にやっておかないと。年取ってから学ぶのと若い頃に学ぶのとでは身につき方が違いますから。

松永 全然違いますね。若いうちから「将来開業したい」というメンタリティがあるなら、それはそれで大事にして、同時に基礎的な力を大学病院や地域の基幹病院で一生懸命身につけて地力をしっかりつけておけば、開業は必ず成功するのではないかと僕は思います。

仲野 あとは、片手にこの本(=『患者が知らない開業医の本音』)を持っていただくということかと(笑)。

松永 そうですね(笑)。

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