味覚障害とは,味覚に何らかの異常が生じる病態である。味覚低下・減退(味が薄い),味覚消失・脱失(味がしない)という量的味覚異常と,自発性異常味覚(何も食べていないのに特定の味がする),異味症(本来の味と味質が異なる),悪味症(何ともいえない嫌な味になる),味覚過敏(味がきつく感じる)のような質的味覚異常に大別される。高齢者,女性に多い。風味障害,亜鉛欠乏性,口腔疾患に起因するもの,薬剤性,糖尿病や腎障害・貧血などの全身疾患,末梢神経性,中枢神経性など多岐にわたる原因がある。
近年,障害部位による分類が提唱されている1)。①味物質が唾液に溶解し味蕾(味細胞)に伝達されるまでの伝導性障害,②味蕾のターンオーバーの遅延による受容器性障害,③味覚神経の障害である神経性障害,④味覚伝導路に障害がなくても味覚を認知できない心因性,にわけて考える。
病悩期間,詳細な症状,既往歴,常用薬,ストレスの有無などの聴取を行う。自覚症状の経時的変化の評価にはVAS(visual analogue scale)を用いるとよい。
舌苔や舌炎の有無,口腔内乾燥を診察する。鼓索神経障害や風味障害の原因となる耳・鼻腔疾患の有無も確認する。
血算,血清亜鉛・鉄・銅の測定を行う。口腔乾燥があれば,シェーグレン症候群の診断目的に抗SS-A抗体,抗SS-B抗体を,大球性貧血があれば,葉酸やビタミンB12の測定を行う。
舌表面の細菌培養検査を行い,カンジダの存在の有無を調べる。口腔乾燥の評価としてはガムテストが簡便である。
電気味覚検査や濾紙ディスク法がある。主に味覚外来を開設している施設では検査が可能である。
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