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嗅覚障害[私の治療]

No.5244 (2024年10月26日発行) P.40

森 恵莉 (東京慈恵会医科大学耳鼻咽喉科学教室講師)

登録日: 2024-10-28

最終更新日: 2024-10-22

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  • COVID-19のパンデミックにより,嗅覚障害への注目が一気に高まった。頻度として最も高いのは鼻副鼻腔疾患で,COVID-19も含めた上気道炎罹患後や外傷性も原因として挙げられる。原因が特定できないこともある。症状としては,嗅覚低下や嗅覚脱失といった量的嗅覚障害や,異嗅症といった質的嗅覚障害をきたす。加齢による変化も認め,嗅覚脱失は人口の約5%に存在すると言われる1)。異常が生じる部位によって病態と原因が異なり,気導性・嗅神経性・中枢性に分類される。病態は単一である場合と,複数で生じている場合とがある。

    ▶診断のポイント

    【詳細な問診】

    発症時期・契機・発症様式や併存症状,そして変動の有無を確認する。また,既往歴・薬剤使用歴・喫煙歴・職業歴や味覚/風味障害の有無も重要な問診事項である。

    【鼻咽腔内視鏡】

    中鼻道や嗅裂部の粘液分泌や粘膜浮腫・鼻茸の有無を確認する。

    【嗅覚検査】

    T&Tオルファクトメーターを使用した基準嗅力検査とアリナミン注射液(プロスルチアミン)を用いる静脈性嗅覚検査がある。診断や治療効果判定には,自覚症状と嗅覚検査の両方にて評価を行うことが望ましい。

    【画像検査】

    必要に応じて,副鼻腔CTにて鼻副鼻腔疾患や嗅裂病変の有無を確認する。原因が特定できない場合,MRIにて嗅球・嗅索を中心に,頭蓋内病変の有無の確認を考慮する。いずれも冠状断が診断に有用である。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方2)

    原因疾患によって治療は大きく異なるが,原因が特定できない場合は嗅神経性嗅覚障害として治療する。

    慢性鼻副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎などの鼻副鼻腔疾患に対して,まずは点鼻薬・鼻洗浄などの局所治療や,薬物療法を行う。滴下式点鼻ステロイドも選択肢となる。効果がなければ手術加療を考慮し,好酸球性鼻副鼻腔炎は,術後にステロイドが必要であれば,分子標的治療薬使用を検討する。

    嗅神経性・中枢性嗅覚障害においては,発症早期は経口ステロイドの投与を検討し,慢性期には嗅覚刺激療法や漢方薬,亜鉛低下例については亜鉛製剤併用も考慮する。鼻副鼻腔疾患である「慢性鼻副鼻腔炎」「アレルギー性鼻炎」「好酸球性鼻副鼻腔炎」の治療方針は各稿を参照のこと。

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