株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

肩関節脱臼[私の治療]

No.5164 (2023年04月15日発行) P.47

山本宣幸 (東北大学大学院医学系研究科整形外科学分野准教授)

登録日: 2023-04-13

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • 1
    • 2
  • next
  • 肩関節は人体の中で最も脱臼しやすい関節である。ひとたび脱臼すると,反復性に移行しやすい。脱臼によって肩関節前方の靱帯が剝離(Bankart損傷:関節唇-下関節上腕靱帯複合体の剝離)するからである。脱臼を整復した後の治療は,初回脱臼と反復性脱臼では異なる。初回脱臼患者には3つの治療方法を提示し,患者に選択してもらう。反復性脱臼患者の場合,根治的治療は手術となる。

    ▶診断のポイント

    単純X線を撮影すれば脱臼の診断は容易である。90%以上は前方脱臼であり,後方脱臼は少ない。時に関節窩や大結節の骨折を合併するので,整復後も必ず単純X線をチェックする必要がある。約20~30%の患者に腋窩神経麻痺を合併するので,腋窩神経麻痺の有無の確認も必要である。肩関節は脱臼すると,約90%の患者で,関節窩骨欠損や骨頭の陥没骨折(Hill-Sachs損傷)を合併する。正確な評価にはCT検査が有用である。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    脱臼を整復した後の治療は,初回脱臼と反復性脱臼では異なる1)。三角巾固定などの内旋固定では,60~80%と高い再脱臼(特に10歳代,20歳代)が報告されている。しかし,外旋固定を行えば,再脱臼を半分に減らすことができることがわかっている2)。初回脱臼であれば,外旋固定でBankart損傷の治癒が期待できる。

    一方,反復性脱臼ではこの外旋固定は有用ではなく,根治治療としては手術が必要になる。手術を行えば,再脱臼は最も少なく抑えることができるが,初回脱臼のすべての患者が反復性に移行するわけではないので,初回脱臼に対する手術は限定すべきである。シーズン中の選手であれば脱臼予防装具を装着し,一時的に脱臼を予防する方法もある。

    したがって初回脱臼患者の場合,これら3つの治療方法(外旋固定,脱臼予防装具,手術)を提示し,患者の希望する方法を選択するのがよい。

    残り1,030文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

    • 1
    • 2
  • next
  • 関連記事・論文

    もっと見る

    関連書籍

    もっと見る

    関連求人情報

    長崎県五島中央病院

    勤務形態: 常勤
    募集科目: 整形外科 1名
    勤務地: 長崎県五島市

    当院は下五島地域唯一の基幹病院として、長崎大学病院等と連携しながら、五島で完結できる医療を目指しています。
    離島内の他の医療機関では出来ない高度・専門医療や離島で不足しがちな救急医療、周産期・小児医療、精神科医療、回復期医療を提供することで“郷診郷創”(地域での受診が地域を創る)を進めています。
    共に地域医療を担っていただける医師を募集しています。

    癌などの専門的治療の他、精神・結核などの政策医療、24時間2.5次救急にも対応しています。
    3次救急患者については、遠隔画像伝送システムを利用し、本土までヘリコプター搬送して住民の命を守っています。
    また、基幹型臨床研修病院として、研修医の受け入れも行っています。

    ロケーション的には、美しい海と豊かな自然に恵まれ、四季を通じて、マリンスポーツや釣りが楽しめます。
    ショッピング等については、中型・大型のスーパーが数店舗あり、ファミリーレストラン・コンビニエンスストアもありますので、基本的に不便を感じることはないと思います。
    食に関しては、五島牛や新鮮な魚介類、季節の旬な野菜が何時でもおいしく食べることができます。
    共に五島で働きましょう。

    もっと見る

    関連物件情報

    もっと見る

    page top