食支援という言葉は様々なところで使用されている。それだけ多くの側面を持っている。医療的な側面だけでなく,介護,生活,金銭面にも至る。そこで,本稿では食支援を以下のように定義する。「本人・家族の口から食べたいという希望がある,もしくは身体的に栄養ケアの必要がある人に対して適切な栄養摂取,経口摂取の維持,食を楽しむことを目的としてリスクマネジメントの視点を持ち,適切な支援を行っていくこと」。
具体的な食支援として,全身管理,栄養管理,口腔環境調整,口腔ケア,摂食嚥下機能のリハビリテーション,食事姿勢の調整,食事環境調整,食事形態の調整,食事づくり,食事介助,などが挙げられる。これらに対応する専門職として医師,看護師,薬剤師,歯科医師,歯科衛生士,管理栄養士,言語聴覚士,理学療法士,作業療法士,ケアマネジャー,ホームヘルパー,福祉用具専門相談員,配食サービス会社,などがある。それぞれの職種とも何らかの食支援に強みがある一方,対応できないこともある。地域という単位で考えたとき,これらの職種が連携し合い,漏れが少ないようにしていかなければならない。これが地域食支援である。
実際,地域で食支援活動を実施する際,「誰に対して,誰が,何をするのか」ということを明確にしなければならない。食支援の定義からすると,対象者は「本人・家族の口から食べたいという希望がある」人であり,摂食嚥下障害者と考えられる。地域の高齢者の中で摂食嚥下障害者の割合は約16%というデータがある1)。また,「身体的に栄養ケアの必要がある人」は,低栄養者と考えることもできる。厚生労働省の「平成30年国民健康・栄養調査」によると,65歳以上の高齢者に占める低栄養の割合は15.8%であった。摂食嚥下障害で低栄養である人も多くいることから推測し,その地域の高齢者の20%近くが食支援の対象者と考えられる。さらに,高齢以外でも食支援を必要としている人がいる。
東京都新宿区を例にとると,高齢人口は約6.7万人。このことから,新宿区で食支援を必要としている人は1万人の規模である。この対象者全員を専門職がケアすることはできない。つまり,地域食支援は専門職だけで成り立つものではない。
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