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帝王切開の大幅引下げで波紋 - 点数撤回要望書と抗議の署名を厚労相に提出 [2014 年度診療報酬改定]

No.4695 (2014年04月19日発行) P.9

登録日: 2014-04-19

最終更新日: 2016-11-15

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【概要】帝王切開の診療報酬点数が手術時間の短縮を理由に大幅に下がり、日本産婦人科医会など産科関連団体が合同で点数撤回を求める要望書を田村憲久厚労相に提出した。


日本産婦人科医会の木下勝之会長、日本産科婦人科学会の岩下光利副理事長、日本周産期・新生児医学会の楠田聡副理事長は2日、帝王切開の保険点数撤回を求める要望書を田村憲久厚労相に手渡した。
この日は新点数に抗議する4万3802筆の署名もあわせて提出。その際、産科団体の役員は「手術時間が短縮したからといって(手技が)やさしくなったのではない。逆に難しくなっている」と強調するとともに、「産科の実情を全く無視した点数の決め方は承服できない」と訴えた。医会によると、田村厚労相は「今回の改定は決定された段階なので変更はできないが、次回改定に際し、帝王切開術の点数に関して前向きに検討する」と応じたという。

●手術時間が半分になり人件費を半額計算
医療技術の診療報酬点数は、外科系96学会が所属する外科系学会社会保険委員会連合(外保連)がまとめる「外保連試案」を参考にしている。改定に先立ち外保連では、手術時間や経費などの調査を行い、各術式の合計費用を厚労省に提出する。
14年度改定に当たり帝王切開について行った調査では、約2000件の手術時間の中央値が約60分という結果になった。前回12年度改定の調査では120分だったことから、手術時間から算定される人件費を半減して計算し、昨年9月に関係団体に対し、外保連試案2014の最終原稿の確認を要請した。
しかしここで、事務上のミスが生じる。

●医会・日産婦は反論の場を失う結果に
医会によると、医会、日産婦の担当者が確認した最終原稿には、前回の「試案2012」と同じ手術料42万4300円が記載されていたため、これを了承。しかし、この点数は誤って記載されたものだった。昨年12月に厚労省に提出した「試案2014」には、人件費を半減させた手術料23万円が記載されており、実際にはこれを参考に点数が検討された。そして今年2月12日、中医協が14年改定を答申し、帝王切開の点数引下げが明らかとなる。
帝王切開の点数引下げについて厚労省保険局医療課は、「技術向上により人件費が半減したからといって点数も半減させたら、何のための技術向上か分からない」とし、2000点減にとどめたことは、むしろ技術向上を評価した結果との認識を示す。
一方、医会の木下会長は「母児のために手術時間の短縮に尽力した産婦人科医の強い想いを無視している」と憤る。また同様の事態が今後繰り返されないよう、外保連と産科関連団体の担当者が試案について直接議論するワーキンググループを設ける方向で検討していると話す。
この問題を巡っては、東京都の産科医が改定前の点数での算定を求める申立書を簡易裁判所民事調停に提出するなど、波紋はさらに広がっている。

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