在宅医療・ケアにおいて便秘・下痢は一般的に遭遇する疾患である。在宅患者の70%以上が便秘薬を内服しているとの報告もあり,在宅ならではの原因も多い。しかしADLやQOLにも大きな影響を及ぼすため,適切に対応する必要がある。
便秘や下痢では,腹痛,痔,出血,食欲低下などの消化器症状が起きる。さらに,便秘では腹満,閉塞・穿孔,脱肛などたまった便の圧による症状が,下痢では脱水のように水分が外に出てしまうことに起因する症状が出る。また,下痢や便失禁では,皮膚トラブルや感染症などを起こしてしまうこともある。
原因精査のための検査では,便秘では閉塞や狭窄がないか,下痢では炎症性疾患がないかを念頭に置く。
問診,触診,全身状態の確認を行う。認知症や失語により適切に訴えられない場合には,家族や多職種からも情報を得る必要がある。
問診では食事状況,排便の状況,腹部症状の有無,内服薬の服薬状況を,触診では腹部膨満感の程度,圧痛の有無を,全身状態の確認ではバイタルサインを含む異常のチェックを行う。
アセスメントラダーでは,障害要因別に環境要因,全身疾患,消化器機能,直腸肛門機能,の4段階にわけて考える。
ブリストルスケールは,便の性状を1(兎糞状便)~7(水様便)にわけて記載する。
食事や運動などの生活改善による対応で症状改善が得られない,または対応困難なときには薬剤選択を考慮する。在宅医療では,薬剤選択にあたり以下の項目の確認も必要になる。
服薬管理者:本人管理が困難な場合が多い。
服薬タイミング:管理状況や排泄タイミングも考慮する。
一包化:一包化に向かない薬剤や,調節が必要な薬剤があるので注意が必要である。
薬剤費負担:既存薬に比べ新規薬は思ったより高額になることもあるので,薬価や負担割合も考慮する。
投薬経路:経口では嚥下状況により剤形や大きさに注意が必要で,口腔内崩壊錠を用いることもある。経管栄養を行う際には,簡易懸濁法の可否等に注意が必要である。
情報共有:状況確認には情報共有が必要である。
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