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【識者の眼】「想像以上に多い健康食品の経済被害」大野 智

No.5173 (2023年06月17日発行) P.64

大野 智 (島根大学医学部附属病院臨床研究センター長)

登録日: 2023-05-31

最終更新日: 2023-05-31

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先日、健康食品など補完代替療法の問題点について、メディアからの取材を受けた。過去の連載記事(No.5015)でも紹介した通り、「健康被害」「経済被害」「機会損失」について説明した。そして、この3つのうち経済被害が件数としては最も多いと話をしたところ、「具体的に、どれくらいの割合ですか?」との質問を受けた。健康食品の契約・請求などにおけるトラブルは、人づてに全体の7〜8割ぐらいと聞いてはいたものの、恥ずかしながら自分で調べることをしていなかったため、改めて調べてみた。今回、反省も込めて数字をお示ししたい。

消費者庁の事故情報データバンクシステム1)によると、「健康食品」をキーワードとして検索すると1万9997件がヒットする。そこに、「解約」「定期」「返品」などのキーワードを組み合わせたり除外したりして検索すると1万5850件がヒットした(検索日:2023年5月27日)。あくまで概算ではあるが、健康食品におけるトラブルの約8割(79.6%)が、経済被害ということになる。

具体的なトラブルの内容をいくつか紹介する。

・1回限りと思ってサプリメントを注文したら、定期購入だった
・初回1カ月分は1000円だったのに自動的に定期購入になり、2万円を請求された
・解約しようと連絡しても電話がつながらず、次々と商品が送られてきた
・いつでも解約可能と書かれていたので解約しようとしたら、解約料を請求された

契約、請求、解約時のトラブルの背景には、飲みにくい、味が合わないなどのほか、腹痛や下痢、蕁麻疹など健康上のトラブルも散見される。また、以前からある通信販売だけでなく、SNSを介した紹介、動画サイトの無料広告などインターネット社会を反映した事例も、数多く確認される。

健康食品などの補完代替療法は、病院で提供される医療とは異なり、マーケティングの名の下、消費者の購買意欲を高めるため、様々な手法を用いて企業が経済活動を行っている。読者の先生におかれては、もし、患者から健康食品の相談を受けたときは、経済被害にあっていないかにも意識を向けて頂きたい。

【文献】

1)消費者庁:事故情報データバンクシステム公式サイト.
https://www.jikojoho.caa.go.jp/ai-national/

大野 智(島根大学医学部附属病院臨床研究センター長)[統合医療・補完代替療法

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