政府のこども未来戦略会議(議長=岸田文雄首相)は6月1日、次元の異なる少子化対策のための「こども未来戦略方針」案を発表した。深刻化する少子化を食い止めるため、今後3年間に取り組む対策として「こども・子育て支援加速化プラン」を包括的に盛り込んだ。しかし、その財源に関しては、「詳細について年末に結論を出す」として、具体策の提示を見送った。
年間3兆円台半ばとされる財源問題は、戦略会議に課せられた最大の課題。岸田首相は増税での対応を否定しているため、有力視されたのは社会保険料の上乗せ負担と医療・介護を中心とした歳出改革だった。しかし、解散総選挙も念頭に与党内から慎重論が噴出、結論を先送りにした格好となった。
「加速化プラン」の多くは2024年度から実施するため、安定財源が確保されるまではこども特例公債を発行して対応する。今回の方針案では、「2028年度までに安定財源を確保する」としつつ、必要な制度改正の法案を2024年の通常国会に提出するとしている。
その一方で、財源を確保するための歳出改革、支援金制度(仮称)は、「国民の理解を得ながら、複数年をかけて進めていく」と強調。「2028年度までに徹底した歳出改革等を行い、それらによって得られる公費の節減等の効果及び社会保険負担軽減の効果を活用しながら、実質的に追加負担を生じさせないことを目指す」と述べ、さらにその歳出改革については「これまでと同様、全世代型社会保障を構築するとの観点から、歳出改革の取組を徹底するほか、既定予算の最大限の活用などを行う」として、現行路線での対応もにじませている。
「加速化プラン」に盛り込まれた施策のうち、医療に関するものは下記の項目。
このうち出産費用の保険適用化の検討は3月に政府が発表した「こども・子育て政策の強化について(試案)」にも盛り込まれていたもので、今回は「2026年度を目途」と時期を示した。
1 出産等の経済的負担の軽減
○ 本年4月からの出産育児一時金の引上げ(42 万円→50 万円)。
○低所得の妊婦に対する初回の産科受診料の費用助成の着実な実施。
○出産費用の見える化について来年度からの実施に向けた具体化を進める。その上でこれらの効果等の検証を行い、2026 年度を目途に、出産費用(正常分娩)の保険適用の導入を含め、出産に関する支援等の更なる強化について検討を進める。
◯無痛分娩について、麻酔を実施する医師の確保を進めるなど、妊婦が安全・安心に出産できる環境整備に向けた支援の在り方の検討。
2 医療費等の負担軽減
○ 地方自治体において実施されているこども医療費助成について、国民健康保険の国庫負担の減額調整措置を廃止。
◯適正な抗菌薬使用などを含め、こどもにとってより良い医療の在り方について、今後、医学界など専門家の意見も踏まえつつ、国と地方の協議の場などにおいて検討し、その結果に基づき必要な措置を講ずる。
3 障害児支援、医療的ケア児支援等
◯医療的ケア児、聴覚障害児など、専門的支援が必要なこどもたちへの対応のため地域における連携体制の強化。