SUMMARY
子ども虐待は日本の喫緊の課題のひとつである。少子高齢化の中,子ども虐待報告件数は増加の一途をたどる。子ども虐待を緊急性の高い社会問題として認識し,総力戦で子どもの未来を守る必要がある。
KEYWORD
子どものアドボケイト
声を挙げることができない子どもたちの声を代弁する人のこと。子どもたちに関わる医療者像として重要な考え方。
PROFILE
北海道家庭医療学センターで家庭医療を学び,その後福岡大学筑紫病院小児科,福岡大学病院総合周産期母子医療センター勤務。家庭医療専門医・指導医。Harvard Medical School FCR修了。
POLICY・座右の銘
優しくいる,誠実でいる,優秀でいる
日本の子ども虐待の歴史は第二次世界大戦前まで遡る。1933年に貧困問題を背景に制定された「児童虐待防止法」は,戦争で親を亡くしてしまった戦争孤児が社会問題となっていたこともあり,戦後間もなく「児童福祉法」にその形を変えた。その後は高度経済成長の中で,子ども虐待は特殊な少数の家庭問題としてとらえられてきた。
しばらくして,1989年に「児童の権利に関する条約」が国連で採択されると,日本も1994年に批准し,2000年11月に「児童虐待の防止等に関する法律(以下,児童虐待防止法)」が施行された。児童虐待防止法では虐待を「保護者(同居人を含む)」がその「監護する児童」に対して行うものと定義し,虐待行為を表1のように心理的虐待,ネグレクト,身体的虐待,性的虐待の4類型に分類した1)。通告義務が規定されたこともあり,この頃から社会問題として強く認識されるようになる。