変形性足関節症は,足関節に対する力学的あるいは生物学的な原因によって関節軟骨の変性が惹起され,関節周囲の骨変化および二次性の滑膜炎を生じて足関節の変形が徐々に進行する退行性疾患である。
明らかな先行病変がない「一次性」,距骨壊死などの非外傷性関節病変や関節リウマチなどの関節炎を誘発する全身性疾患に続発する「二次性」,関節周囲の外傷に続発する「外傷性」に分類される。わが国では外傷性は半数未満(45%)であり,一次性が比較的多い(28%)1)。
足関節に疼痛を認め,歩行時に増強する。初期は歩きはじめの違和感や長時間歩行後の鈍痛が多い。進行すれば安静時痛が出現し,跛行が生じる。
足関節に腫脹,および内側部を中心とした圧痛を認める。可動域は背屈が制限されていることが多い。肉眼的に足関節に内反や外反変形を生じる。
単純X線像では,初期には軟骨下骨の硬化像や骨棘を,進行すれば関節裂隙の狭小化または消失を認める。高倉・田中分類では病期を1期,2期,3a期,3b期,4期に分類しており2),病期によって術式が異なる。
まずは十分な保存的治療を行う。疼痛の急性増悪期には,局所の安静と消炎鎮痛薬の投与を行う。症状が安定すれば日常生活指導,運動療法,装具療法を行い,疼痛の軽減とADLの拡大をめざす。日常生活指導では重労働,長時間の立ち仕事,スポーツなどを制限する。肥満があれば,食事指導や足関節への負荷が少ない運動による体重コントロールについて指導を行う。運動療法では,下腿筋群の筋力トレーニングや,関節包や足関節周囲筋の拘縮による可動域制限に対して,足関節背屈を中心としたストレッチングを行うよう指導する。装具療法では,急性増悪期など滑膜炎が強い場合には,支持性の強い足関節サポーターで安静を図る。疼痛が改善すれば,内反型の変形であればアウターウェッジ,外反型であればインナーウェッジの足底挿板を処方する。
保存的治療で3カ月以上症状の改善を認めない症例には,外科的治療を考慮する。病期,年齢,活動性をもとに術式を選択し,除痛とADLの拡大,関節症の進行予防をめざす。後述する低位脛骨骨切り術,遠位脛骨斜め骨切り術,人工関節置換術には,高度な知識と経験を要するため,専門医に相談する。
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