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慢性心不全[私の治療]

No.5175 (2023年07月01日発行) P.33

弓野 大 (医療法人社団ゆみの理事長)

登録日: 2023-07-04

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  • 心不全の在宅管理においては,病状を診る上で内部障害である心不全自体の問題か,またはフレイルの進行によるものか,心不全とフレイルの病期を正しくとらえることが重要となる。特に,心不全のステージCまたはDの状態にあるかを見きわめることにより,どこまで積極的な治療を行えるのかは在宅管理の肝となるところである。適切な治療自体が症状緩和につながることも疾患の特異な点となる。

    ▶長期管理・経過観察上の臨床的注意点

    臨床経過において,再入院の頻度は退院直後と終末期の二峰性にある。一般的にその要因は,退院直後は心不全うっ血の増悪により,終末期はフレイルに伴う誤嚥性肺炎や転倒,また老衰や介護負担と非心不全によるものとなる。長期管理のために,うっ血の診かたは重要である。症状(労作時から安静時の息切れ増悪),体重(増加と減少),視診触診(頸静脈怒張,肝頸静脈逆流,前腕挙上による末梢静脈変化,肝腫大・下肢浮腫・陰囊浮腫・痔の悪化,労作での呼吸の状態),心音(Ⅲ,Ⅱp亢進),呼吸音(胸部ラ音),BNP/NT-proBNPの上昇など,在宅においても患者の包括的観察により,心不全の状態変化をみていくことができる。

    ▶リハビリテーション

    心不全患者への訪問リハビリテーションは有効である。疾患モニタリング,環境調整,活動調整,セルフケア支援,介助方法伝達,症状緩和リハビリテーションなどを行うことができる。特に在宅緩和ケアとして,呼気誘導,ポジショニング,三叉神経刺激,風を当てる,などは時に有効であり,引き出しを1つでも多く持つことが在宅管理には必要となる。

    ▶緊急時の対応

    急性心不全の初期対応を考える上で,クリニカルシナリオ(CS)が臨床的に使われる。体液シフトに伴う急激な肺水腫は,収縮期血圧140mmHg以上と高値のことが多くCS1と呼ばれ,酸素化,血管拡張薬の使用により速やかに改善するケースが多い。一方で,徐々に全身に体液が貯留していく病態(CS2),血圧が100mmHgを切るような低心拍出症候群(CS3)の場合は,利尿薬増量のみでのうっ血の解除は困難であり,強心薬持続点滴などの入院選択も考慮しなければならない。

    【在宅心不全患者の入院適応】

    ・CS1で,初期治療でも酸素化の改善が乏しく,意識状態の悪化を認める。

    ・CS2またはCS3で,適切な生活管理および利尿薬投与でも尿量の増加がなく,改善がみられない。

    ・意識障害,誤嚥性肺炎や消化管出血,イレウスの併発がある。

    ・さらなる適切な心不全治療により改善が見込める。

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