厚生労働省は6月23日、茨城県内で2022年初夏に心筋炎で死亡した70代女性患者について、オズウイルス(Oz virus: OZV)による心筋炎と診断されたと発表した。OZVによるヒト発症例が確認されたのは世界で初めて。
OZVはオルソミクソウイルス科トゴトウイルス属に分類される新規RNAウイルス。2018年に愛媛県でタカサゴキララマダニから初めて分離同定されたが、これまでヒトでの発症や死亡例は確認されていなかった。
死亡した患者は、入院時に飽血に近い状態のマダニの咬着が確認されたため、採取した血液、尿を茨城県衛生検査所と国立感染症研究所で検査。その結果、検体すべてでOZV遺伝子断片が確認され、心筋細胞からOZV遺伝子を検出した。検査結果と病理組織所見からOZV感染により生じたウイルス性心筋炎によって死亡したOZV感染症と診断された。
OZVはわが国以外では検出された報告はないが、わが国では野生動物などの感染が確認されており、特に関東以西の広い地域に分布している可能性が指摘されている。OZV感染症の潜伏期間、検査所見の特徴はまだ不明で、確定診断にはウイルス学的検査が必要。現時点で有効な治療法はなく、対症療法に限られる。
厚生労働省は今回の報告を受け、都道府県に対し、ダニ媒介感染症の予防対策について保健所や医療機関に周知・啓発を呼びかける通知を発出した。一般向けのQ&Aでは、「草むらや藪など、マダニが多く生息する場所に入る場合は、長袖、長ズボン、足を完全に覆う靴を着用し、肌の露出を少なくすることが大事」と注意を喚起している。