当時55歳のカナダ人女性Donna Denisonさんは元高校教師で、ご主人とともに1997年10月に旅行者として来日した。感冒様症状と右の耳痛があった。来日して6日後の早朝、ホテルの自室トイレで意識障害の状態で発見され、私が勤務していた聖路加国際病院に緊急搬送された。来院時、意識JCSⅢ-200、体温38.7℃、脈拍120回/分、呼吸数30回/分、血圧80mmHgに低下、項部硬直あり、四肢末梢に循環障害があった。頭部CTは異常なく、髄液は細胞数6848/mm3(多核球89%)、糖28mg/dL、蛋白141 mg/dL、グラム染色でグラム陽性双球菌を多数認め、肺炎球菌による急性細菌性髄膜炎、重症敗血症、中耳炎と診断してICUに入院した。
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