在宅医療の対象は,①がん末期,②心不全,呼吸不全などの臓器不全,③脳血管障害,認知症,神経・筋疾患など,ADLの低下あるいは認知機能の低下もしくはその両方のため通院が困難な患者である。
アドバンス・ケア・プランニング(ACP)の国際的な定義1)は次の通りである。「患者・家族・医療従事者の話し合いを通じて,患者の価値観を明らかにし,これからの治療・ケアの目標や選好を明確にするプロセスのこと。身体的なことにとどまらず,心理的,社会的,スピリチュアルな側面も含む。治療やケアの選好は定期的に見直されるべきである。医療代理人の選定や医療・ケアの選好を文書化してもよい」。在宅医療においても行うことは同じである。
在宅におけるACPは,①比較的最期まで患者の意識が確認できるがん等の患者と,②患者の意思が確認できない認知症等の患者,にわけられる2)。
在宅医療を始めるにあたって最初に行うことは,緩和ケアとACPである。苦痛の緩和は最優先に行う。緩和ケアとは,生命を脅かす病に関連する問題に直面している患者とその家族のQOLを,痛みやその他の身体的・心理社会的・スピリチュアルな問題を早期に見出し,的確に評価・対応することで,苦痛を予防し和らげることを通して向上させるアプローチである3)。
ACPを始める前に,訪問依頼があった時点で,家族,訪問医師,訪問看護師,訪問薬剤師,ケアマネジャー,場合によってはリハビリテーション関係者,福祉用具専門相談員などに連絡をとり,初回訪問時に集まってもらう。独居の場合は行政の福祉関係者にも参加を依頼する。
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