在宅医療において,新型コロナウイルス感染症(corona virus infectious disease, emerged in 2019:COVID-19)は以下の2つの点で重要である。すなわち,①在宅医療を受けている療養者は重症化する可能性が高い,②急性期医療の逼迫時は在宅医療で治療を完遂させなければならない可能性がある,ということである。COVID-19における一般的な病態・治療等は別稿に譲り,本稿では在宅医療におけるCOVID-19診療に特徴的なポイントを中心に解説する。
発熱,咽頭痛,咳嗽だけでなく,高齢者における一般的な感染症と同様に,倦怠感,食思不振,転倒,軽度の意識障害などが初期症状のこともある。
また,COVID-19では発症日が治療適応や悪化のタイミング予測に重要であるが,高齢者を含む在宅医療を受けている療養者はしばしば「倦怠感はあったが熱がなかったので発症日ではないと思っていた」などと発症日について誤解していることもあり,医療者側から積極的に発症日前後の症状の有無を確認することが重要である。
病院での医療と同様に,血液検査で全身状態の評価や重症化の予測を行う。
在宅医療では放射線画像検査が使用できないことが多いため,しばしばわが国の重症度分類における中等症Ⅰ(肺炎を有するが呼吸不全に至っていない状態)の判断に難渋する。これに対しては労作時のSpO2低下を評価することが有用である。具体的には40歩歩行テスト,あるいは1分間立位坐位テストにてSpO2が3~5%低下する場合は,肺炎を有する可能性が高いとされている1)。
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