米国臨床腫瘍学会(American Society of Clinical Oncology:ASCO)が、がん疼痛に対する統合医療(補完代替療法)のガイドラインを公表していることをご存知だろうか?(※正確には、Society for Integrative Oncologyとの共同作成)1)
がん疼痛は、がんと診断された患者が最も多く経験する症状で、生活の質や治療完遂への悪影響が指摘されている。また、がん生存者の増加にともない、がん疼痛への対応は社会的問題にもなってきている。
米国では、統合医療を「科学的根拠に基づいた補完療法と、従来のケア・治療を調整しながら組み合わせて使用するもの」と定義している。最近では、がんセンターで利用できるようにもなってきており、がん患者の約40%が統合医療を利用していると推定されている。そのため、適切に統合医療が実践されることを目的にガイドラインが作成された。
文献検索の対象は1990〜2021年に発表されたランダム化比較試験、システマティックレビュー、メタアナリシスであり、個々の研究の質、エビデンスの質、推奨の強さ、バイアスのリスク等が評価されている。13の推奨事項が挙げられているが、本稿では、「エビデンスの質」「推奨の強さ」がいずれも『中』以上のものを紹介する。
さらに、ガイドラインを公表するだけでなく、診療現場で実際に患者から質問される場面を想定したQ&Aも作成している2)。その一方で、別の研究者からは、統合医療を実践していく上で、保険適用の問題、統合医療へのアクセスの問題(地域格差)、医師の統合医療への理解不足などの課題や問題点が指摘され、解決策が提案されるなど、様々な議論が交わされている3)。
日本でも、がん患者の4〜5割が統合医療を利用していることが明らかになっており、適切に利用されトラブルに巻き込まれないための取り組みが、今後、求められてくると考える。
【文献】
1)Mao JJ, et al:J Clin Oncol. 2022;40(34):3998-4024.
2)Mao JJ, et al:JCO Oncol Pract. 2023;19(1):45-8.
3)Liou KT, et al:JNCI Cancer Spectr. 2023;7(4):pkad042.
大野 智(島根大学医学部附属病院臨床研究センター長)[統合医療・補完代替療法㊹]