自己免疫疾患などを背景とした慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)合併妊娠は稀ではなく,流・早産や妊娠高血圧症候群,胎児発育不全のリスクが一般集団と比較して上昇することが知られている。加えて,妊娠そのものが腎機能障害を悪化させるリスクを有するため,妊娠前のカウンセリングおよび妊娠・分娩管理には慎重な対応を要する。
CKDは尿蛋白と糸球体濾過率(GFR)の低下を主症状とし,重症度は原疾患,GFR,蛋白尿の程度により評価される。特に中等度以上の腎機能障害(GFR<60mL/分/1.73m2)を伴う場合,GFRが低下するほど妊娠合併症やさらなる腎機能低下のリスクが高くなる。一方で,現時点では腎炎の病理組織型による妊娠合併症リスクの違いは明らかではなく,妊娠後に判明したCKDに対する病理組織診断は必須ではない。
挙児希望のある女性に対して,妊娠に伴う合併症および腎機能への影響について十分なカウンセリングを行う。筆者らは原則として,①基礎疾患の臨床症状が安定している,②蛋白尿が1.0g/日以下,③血圧が130/80mmHg未満,④催奇形性等のある薬剤の中止後,を妊娠許可基準としており,基準を満たさない場合には個々に対応している。妊娠初期の正常血圧は健全な胎盤形成に重要と考えられ,目標血圧を130/80mmHg未満として入院による薬剤調整を行うこともある。
妊娠判明後は無理のない生活,自宅血圧および体重測定を指導し,妊婦健診では胎児発育に注意する。腎機能検査のほかに,血液検査では血小板数,肝機能,凝固・線溶系も随時評価する。妊娠高血圧腎症の発症予防として妊娠11〜13週から低用量アスピリン内服を開始し,妊娠28週まで継続する。妊娠中に腎機能低下がみられる場合には,胎児の未熟性を考慮した上で,早産期での妊娠終結も検討する。
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