透析患者の高齢化,合併症の多様化が進む中,2020年に日本透析医学会より「透析の開始と継続に関する意思決定プロセスについての提言」がなされた。各透析導入病院においても,患者および家族が治療に対する理解を深め,医療者とともに最善の治療選択を行うことを支援する手段としてshared decision making(SDM)に基づく決定が実施され,その結果,心負荷や血圧の変動が小さい,食事制限が緩い,QOLが保たれる,通院負担が軽減される,などの観点から,高齢であっても腹膜透析(PD)を選択するケースも増加している。
導入前に患者背景,主介護者,キーパーソン,ADL全般,日常の生活習慣,介護保険申請の有無,要介護度,現在利用しているサービスの有無,ケアマネジャーの連絡先など,必要な情報を収集し,現在の心配事,将来に対する不安などについて事前面談を行うことが有用である。
PD導入直後はトラブルが起こりやすい時期であり,退院に合わせて,病院スタッフや訪問看護師による在宅環境確認,接続操作手技,出口部洗浄や入浴方法の再指導などが必要である。
スタッフの指示のもとで行う入院中の手技と,本人および家族のみで行う退院後の手技では緊張感が異なるため,細かな配慮が必要である。
また,高齢者ではPD導入当初は自己管理が可能であっても,いずれは認知機能低下やADLの低下のために自己管理が困難となることが予想されるため,継続的な訪問看護の介入が大切である。また,介護保険申請が必要になった際には,PDに理解のあるケアマネジャーへの相談が重要である。
かかりつけ医として常時連絡がとれる連絡先を伝えておくとともに,入院が必要な際のバックアップ病院(主に導入病院),リハビリテーション・レスパイトなどのための後方支援病院の確保を心がける。
災害時対応として,緊急連絡先の確認,避難所への準備物品リスト作成などを行う。
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