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唾液腺良性腫瘍[私の治療]

No.5186 (2023年09月16日発行) P.48

西谷友樹雄 (国立がん研究センター東病院頭頸部外科)

登録日: 2023-09-13

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  • 唾液腺には大唾液腺(耳下腺,顎下腺,舌下腺)と小唾液腺があり,唾液腺良性腫瘍の発生は耳下腺が最も多い。耳下腺に発生する腫瘍は良性の割合が高いが,顎下腺では約半数が悪性,舌下腺と小唾液腺では悪性が多くを占める。唾液腺腫瘍は多彩な組織型の腫瘍が発生するが,良性腫瘍は多形腺腫,ワルチン腫瘍が多く,基底細胞腺腫や囊胞がこれらに続く。多形腺腫は若年者にも発生し,女性にやや多い。一方,ワルチン腫瘍は中年以降の男性に多く,喫煙歴を有する場合が多い。

    ▶診断のポイント

    【診察所見】

    耳下腺浅葉の良性腫瘍は,耳下部の可動性良好な腫瘤として触知される。顔面神経麻痺の合併はなく,通常,感染や出血を伴わなければ疼痛の訴えはない。顎下腺良性腫瘍は口腔底と顎下部からの双手診で可動性良好な腫瘤として触知される。

    【検査所見】

    画像検査を行い,腫瘍の局在や性状を確認する。内部性状の観察にはMRIや超音波が優れている。多形腺腫は被膜構造を持った境界明瞭な分葉状腫瘤として描出されることが多い。ワルチン腫瘍は耳下腺尾部を中心とした境界明瞭,辺縁平滑な類円形腫瘤として認められることが多く,両側性,多発性に生じる場合もある。画像上,良性腫瘍と低悪性度腫瘍との鑑別はしばしば困難である。

    穿刺吸引細胞診検査は腫瘍の良悪性,組織型を判断するのに有用であり,正診率は8割以上と高いが,低悪性度腫瘍との鑑別は難しい。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    唾液腺良性腫瘍に対する治療は外科的治療である。唾液腺は多彩な組織型の腫瘍が発生するが,多形腺腫は良性腫瘍でも悪性転化の可能性があるため,手術が推奨される。ワルチン腫瘍など悪性転化のリスクが低い良性腫瘍は手術の絶対的適応とはならないが,診断は腫瘍摘出により確定する場合が多く,低悪性度腫瘍の除外は難しいことなどから,外科的治療も検討される。

    診察,画像所見,細胞診等から腫瘍の良悪性および組織型を判断し,年齢,症状,合併症,患者希望と合わせて,総合的に手術適応を判断する。

    手術を行わない場合は,多形腺腫は悪性転化をきたす可能性があることや低悪性度腫瘍の除外は難しいことなどを念頭に置き,経過観察を行う必要がある。腫瘍増大や性状変化,顔面神経麻痺や疼痛症状などが認められた場合には,精査加療を検討する。

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