在宅医療で経験される事故等のうち,アナフィラキシーショックと入浴死亡事故,労働災害について述べる。これらは重大な結果をもたらしうるが,予測していれば回避可能なことが多い。したがって,生じうることを意識した日常的準備,特にマニュアル作成と周知が重要である。
抗菌薬の静脈内投与や予防接種を行う場合,低率だがアナフィラキシーショックが生じうる。アナフィラキシーショックは,装備等を事前に準備し,活用すれば高率に救命できる。
在宅医療実施にあたり,アドレナリン(できればエピペンⓇまたはプレフィルドシリンジ),バックバルブマスク(アンビューバッグ)を常時保有する。前者は往診かばん(訪問看護かばん)に,後者は自動車内に常備するとよい。
抗菌薬の静脈内投与や予防接種時には,医師単独ではなく,看護師同行など,最低2人以上で訪問する(運転手などを含め3人が望ましい)。
注射後30分間は患者を1人にしない。
一手目 :エピペンⓇ注(アドレナリン)1回0.3mg(大腿外側に筋注,大腿に刺せない場合は他の場所の筋肉でも可)+用手人工呼吸を躊躇なく行う。同時並行して救急車を要請する(運転手,事務職員等を訓練し,救急車を呼んだり,救急隊を誘導できたりするようにしておく)
「介助入浴」での入浴中の死亡事故は基本的にない。入浴死亡事故は,動作能力がある程度保たれた虚弱な高齢者が単独で入浴するときに生じる。したがって,「動作能力が保たれている虚弱高齢者」に留意することが重要である。
ある程度動作が保たれていても,「虚弱な高齢者は見守り(介助)入浴してもらう」ことで安全を担保できる。
見守り(介助)されるのが嫌な人に対しては,「他者が屋内に存在するときにのみ」入浴を許可する。
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