皮疹の鑑別診断は数多く,皮膚科医でない医師が正確な診断をすることは必ずしも容易ではないが,緊急性や頻度の高い疾患の鑑別・対応は必要である。
皮膚疾患は皮膚だけに障害をきたす場合もあるが,内科的疾患がもとで皮膚症状が生じることもあるので,皮膚以外の症状の有無も適宜評価する必要がある。
・全身状態悪化を示唆する症状の有無
・病状の進展(出現部位,皮疹の進行や広がり方,持続時間,慢性皮疹の消失あるいは改善までの時間)
・皮疹に伴う症状(かゆみ,灼熱感,痛み,しびれ,症状の日内変動の様子)
・随伴症状の有無(倦怠感,発熱,腫脹,関節痛など)
・現在または過去の薬歴(市販薬も含む)
・既往歴と治療中の疾患
・アレルギー歴
・光線過敏の有無
・家族歴(特に黒色腫,アトピー,乾癬,痤瘡との関連)
・関連する社会歴,性行動歴,旅行歴
診察にあたっては,皮膚病変の4つの特徴である皮疹の分布,原発疹か続発疹か,個疹の形状,配列に考慮して行うとよい。触診から得られる情報(硬さ,可動性),問診から得られる情報(自覚症状や経時変化)を加味して診断を絞る。
皮膚・粘膜症状のほかに,循環・呼吸・消化器症状を伴う。気道狭窄やSpO2低下,血圧低下や意識障害を伴う場合は重症であり,より緊急性が高い。
膨疹が急激に出現し,自覚症状は皮疹の瘙痒感である。膨疹の場所が時間とともに移り変わっていくことがあるが,通常24時間以内に消失する。
三叉神経または脊髄後根神経内に潜伏感染している水痘・帯状疱疹ウイルスの再活性化により発症する。同神経支配に沿って,帯状の分布を呈する。疼痛が先行するか,ほぼ同時に浮腫性紅斑と小水疱が生じる。原則的には片側性であるが,稀に両側性のこともある。両側性の場合,免疫低下を考慮する。
虫刺症は,虫による穿刺部位の炎症反応であるため,現病歴,虫刺口の有無から判断する。野山に立ち入った現病歴があればマダニ感染(ライム病,つつが虫病)の可能性を考慮する。
ライム病:マダニ刺咬部を中心とする限局性の環状または均一の特徴的な遊走性紅斑を呈することが多い。発熱,倦怠感などの感冒様症状を伴うことがある。進行すると,多臓器不全を呈する。
つつが虫病:症状は発熱,刺し口,皮疹が主要三徴候と呼ばれ,それぞれ約90%の患者で認められる。刺し口は径10mm前後で黒色痂皮の周りに発赤を伴うものが典型的で,股間,腋窩,腰部など発見されにくい部位が多く,頭髪部,被覆部含めて全身観察を行うことが重要である。リンパ節腫脹,肝酵素上昇を認めることが多く,進行すると播種性血管内凝固症候群を合併することがある。
残り1,051文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する