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ウイルス性疣贅[私の治療]

No.5190 (2023年10月14日発行) P.43

三石 剛 (さいたま赤十字病院皮膚科部長)

登録日: 2023-10-14

最終更新日: 2023-10-10

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  • ウイルス性疣贅は,ヒト乳頭腫ウイルス(human papillomavirus:HPV)の感染によって皮膚・粘膜に生じる良性腫瘍の総称である。皮膚科領域で診るウイルス性疣贅の多くが尋常性疣贅であり,典型例と非典型例にわけられる。ウイルス性疣贅にはそのほかに扁平疣贅,尖圭コンジローマ,疣贅状表皮発育異常症などがある。

    ▶診断のポイント

    【尋常性疣贅】
    〈典型例〉

    手足に好発し,数mm~1cm大の表面は角化した結節を生じ,徐々に増加する。小さな結節は表面平滑で光沢がある。大きな結節は角化が著明で表面粗糙な乳頭状を呈する。最も多い病型で難治例や多発例も少なくない。ダーモスコピーでは点状出血,ヘアピン血管,凝血塊,乳頭状構造等の所見を呈する。鑑別疾患は主に脂漏性角化症,胼胝腫,鶏眼等である。臨床像はHPVの感染部位によって変わってくる。

    〈非典型例〉

    ①指状/糸状疣贅
    主として顔面・頸部に生じ,外方向性に増殖する疣贅である。指をすぼめたような形状を呈するものを指状疣贅,先端が細長く尖った形状を呈するものを糸状疣贅と称する。

    ②爪部疣贅
    爪部に生じる難治性疣贅である。爪周囲に疣贅が生じると,側爪郭,後爪郭から爪上皮にHPVの感染が広がり,爪下疣贅となることがある。その後,上皮が増殖し角質層の肥厚をきたして爪を押し上げ,難治性の爪下疣贅をきたす。

    ③足底疣贅・モザイク疣贅
    足背と違い足底は加圧部のため疣贅の外方向性増殖が乏しく, HPV感染表皮細胞は内方向に増殖していき,表面粗糙な角化性局面,結節を生じる。足底疣贅の中で,個疹が融合し敷石状の形を呈した際,モザイク疣贅と呼ばれる。

    ④ドーナツ疣贅
    環状を呈する疣贅で,再発例としてみられる。典型例,非典型例の原因は,いずれもHPV2(2a)/27/57型の感染が主である。わが国ではHPV27型の感染が比較的多い。

    【扁平疣贅】

    主に顔面,四肢に生じる。皮膚面からわずかに隆起した皮疹で褐色~正常皮膚色であり,円形~多角形の形状をなし,表面は平滑であることが多く,角化傾向は少ない。臨床像は多彩であり,しばしば多発し散在性,集簇性にみられるが,搔破などによってHPVが拡散し,疣贅が線状に配列するケブネル現象は特徴的である。鑑別疾患は脂漏性角化症,脂腺増殖症,ミリウム,汗管腫,黄色腫等が挙がる。的確な診断をつけるには病理組織検査が一般的である。しかし,病変が古いと扁平疣贅に特異的なbird’s eyeが表皮内に認められないことがある。最終的にはHPV遺伝子検索で確定診断に至る。HPV3/10/28/29/77/78/94/117/125/160型等の感染により生じる。

    【尖圭コンジローマ】

    主として外陰部,肛門周囲の皮膚粘膜移行部に発症し,乳頭状,鶏冠状,カリフラワー状を呈する疣贅である。HPV6/11型の感染による。鑑別診断はボーエン様丘疹症,陰茎真珠様小丘疹,腟前庭乳頭腫症,フォアダイス状態などがある。稀に乳幼児にみられる。出産時に新生児の肛門周囲,喉頭,気管支等の粘膜上皮細胞にHPVが感染し,やがて肛門周囲に疣贅や再発性呼吸器乳頭腫症が生じる。産道感染が考えられている。

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