製剤に詳しい昭和大薬学部客員教授の倉田なおみ氏は10月25日、都内で講演し、服薬時に飲み込みにくさを感じる人の2割超が「錠剤を砕いて飲む」などの不適切な飲み方をしているとの調査結果が出たことを受け、錠剤嚥下障害のある患者がOD錠(口腔内崩壊錠)など最適な剤形を選択できるよう薬剤師が積極介入すべきと訴えた。
講演は、「錠剤嚥下障害」をテーマとした沢井製薬主催のメディアセミナーで行われた。
不適切な服薬方法の問題については、沢井製薬が50~70代の男女2000人を対象に9月28~29日に実施した調査で、「毎回の服薬時に飲み込みにくさを感じる人」の13.3%が錠剤を砕いて飲んでおり、「食事に混ぜる」(2.2%)、「薬剤をカプセルから出して飲んだ」(6.7%)などを合わせると不適切な飲み方をしている人は2割超に上るとの結果が出た。
倉田氏は、自らが研究責任者を務めた厚生労働科学研究の調査(2021年7月~2022年1月)でも、内服薬を服用している介護施設利用者の2割超が粉砕して服用している実態が明らかになったことを紹介。「錠剤を砕くと生命に関わる有害事象が起こることがある」として、「錠剤をつぶすという文化をなくす」「錠剤が飲めない場合はOD錠などを選択すべき」と訴えた。
現在、医薬品の供給不足が社会問題化する中で「必要のないOD錠は整理すべき」との議論があることについて、倉田氏は記者の質問に答え、「患者本位で考えるべき。普通錠を2錠飲む場合と普通錠とOD錠を飲む場合とではOD錠が入っている方が飲みやすいというデータがあり、OD錠が増えれば増えるほど飲みやすくなる。私は全部の錠剤がOD錠でいいかなと思っている。OD錠の製造を制限するのは患者のためにはならない」と強調。
OD錠がない場合の対応については「細粒剤を飲める患者かもしれないし、とろみ剤などを使うと上手に飲める患者かもしれない。患者の嚥下能力に合わせてどの薬を選択するかは薬剤師の腕の見せ所」と述べ、介護施設などの現場に薬剤師が積極介入できる環境整備を求めた。
倉田氏とともに記者の質問に答えた沢井製薬の横田祥士研究開発本部長は、技術的な問題として「OD錠の開発が難しいものもある。すべてがOD錠にできるというものではない」と説明した。