中央社会保険医療協議会は10月27日、医療従事者の処遇改善をテーマに議論した。診療側は、医療従事者の処遇改善を実現するための原資として診療報酬の引き上げを要望。支払側は医療機関内の財源配分の工夫で処遇改善の原資を捻出するべきだとして、引き上げに強く反対した。
医療従事者のうち看護職員に関しては2022年10月に、賃金を月額平均で1万2000円程度引き上げることを目指して「看護職員処遇改善評価料」を新設。届出医療機関の賃金改善の実績額は平均1万1388円となっており、概ね目標が達成されたことが確認されている。しかし同加算は届出対象が救急医療で一定の実績がある医療機関に限られる、看護職員以外で処遇改善を行える職種に病院薬剤師が含まれていない―などの課題もあり、医療関係者からは対象医療機関や職種の拡大を求める声が上がっている。
一方、医療と他産業を比較すると、コメディカル(医師・歯科医師・薬剤師・看護師を除く医療関係職種)の給与平均額は全産業平均を下回るのが現状。さらに医療関係職種の有効求人倍率は近年2~3倍程度で推移し、入職超過率は産業計を0.3ポイント下回るなど、人材の確保は極めて難しい状況にある。
同日の総会では厚労省が、「看護職員処遇改善評価料」の実績や他産業の賃上げ動向などを踏まえた医療機関等の職員の処遇改善のあり方を論点として提示した。
診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は、売上に相当する診療報酬が公定価格である医療機関は、一般企業のようにコストの上昇を価格に転嫁できない特性があることを繰り返し強調。「医療従事者の賃上げの確実な実施のためには診療報酬を引き上げ、賃上げの原資を確保する対応が必須だ」と主張した。これに対して支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は、「医療機関のマネジメントによって医療費の増加分を賃金が相対的に低い職種に充てる流れにしていくべきだ。安易に診療報酬を引き上げるべきではない」と反発した。
同日の総会には、診療報酬調査専門組織である入院・外来医療等の調査・評価分科会のとりまとめも報告され、今後、分科会の指摘事項を踏まえた議論を進めていく方向性が確認された。