財務省が診療所の経営状況が好転しているとして診療報酬本体のマイナス改定を求めていることに対し、日本医師会と四病院団体協議会(四病協)は11月15日、日医会館で会見を開いて合同声明を発表、医療界が一致結束して大幅な診療報酬の引き上げを求めていく姿勢をアピールした。
会見の冒頭で松本吉郎日医会長は、改定論議が本格化する中、「財務省による医療界を分断するような動きがある」と警戒感を表明。「人事院勧告3.3%を大きく上回る賃上げと物価高騰、さらに技術革新への対応には十分な原資が必要不可欠」との合同声明を読み上げながら、「医療界が一体・一丸となって、診療報酬改定の方向性について声を1つにして歩んでいく」と表明した。
出席した病院団体の代表は、「入院基本料の引き上げが一丁目一番地。1.5倍から2倍上げてほしい」(島弘志日本病院会副会長)、「病院は賃上げの余裕がない。世間並みに上げないと他産業に流れてしまう」(猪口雄二全日本病院協会会長)、「10月以降、新型コロナの空床補助金はほとんど入らず、2023年度は利益率が初めてマイナスになることが予想される」(加納繁照日本医療法人協会会長)、「財務省は医療機関に内部留保があるかのように主張しているが、実際にそのような医療機関があるのか。持続的な賃上げは診療報酬が最適」(長瀬輝諠日本精神科病院協会顧問)として、現在の病院経営の厳しさと診療報酬の大幅な引き上げを訴えた。
さらに、診療所と病院を分ける見方については、「地域包括ケアの観点からもこれを分断するようなことはあり得ない」との意見が相次いだ。
改定論議が本格化する中、日本医師会は松本会長らが政府、与党への働きかけを強めている。11月10日の三師会合同記者会見の後、公明党に対して日医の考え方を説明。週明けの13日には自民党三役、翌14日には武見厚生労働相に対し三師会連名の要望を説明した。さらに15日の会見後には高橋英登日歯会長、山本信夫日薬会長とともに首相官邸で岸田首相と面会、大幅な引き上げを訴えた。