【質問者】
原口直樹 聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院教授/病院長
【診断には骨盤正面X線撮影が必須で,CT検査が不可欠。TypeⅠ,Ⅱは保存治療,TypeⅢ,Ⅳは手術治療を推奨】
脆弱性骨盤骨折(fragility fractures of the pelvis:FFP)は,骨盤の骨密度の減少に伴い強度が低下することで生じ,人口の高齢化に伴いその発生は増加しています。FFP患者の多くは,転倒などの軽微な外傷の既往とそれに続く骨盤部の疼痛を主訴として救急を受診します。認知機能が低下した患者では転倒の記憶が定かでない場合もあります。
疼痛の程度は様々で,体動困難例から短距離歩行が可能な例まであり,過小に評価されないように注意が必要です。痛む部位も,骨折の局在によって,鼠径部や腰部,臀部など様々です。
FFPは高エネルギー外傷に伴う骨盤骨折とは異なったメカニズムで生じています。多くは靱帯の損傷は伴わず,骨盤輪の顕著な不安定は認めません。臨床的にFFPが疑われる患者には骨盤正面X線撮影が必須であり,必要に応じて入口および出口撮影を行いますが,仙骨骨折の転位は評価困難な場合が少なくありません。不安定性を予測するためには,正確な骨折の診断が要求されることからCT検査は不可欠です。受傷から時間の経過したFFPでは骨折部に仮骨形成を伴っている症例もあり,CTで正確に把握することが可能です。
MRIは,FFPを診断する上で最も感度の高い検査であり,仙骨内の骨挫傷や転位のない骨折を発見することができます。しかし,全例でMRIを撮影しているわけではなく,CTで患者の愁訴を説明できるような所見が得られなかった場合にのみ撮影しています。
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