人口の高齢化に伴い,大腿骨近位部骨折は右肩上がりに増加しています。本外傷は高齢者のADLおよびQOLの低下のみならず,医療経済の観点からも大きな社会問題となっています。近年では,早期手術および,それを可能とするための多職種連携の重要性が広く求められるようになってきています。各施設にて早期手術を可能とする取り組みと再骨折予防のために我々が取り組んでいくべき内容についてご教示下さい。
長崎医療センター・宮本俊之先生にご解説をお願いいたします。
【質問者】依光正則 岡山大学医学部整形外科講師
【早期手術は既存の枠組みでは困難であり,システム構築を行うことが必須である】
日本整形外科学会症例レジストリー(Japanese Orthopaedic Association National Registry:JOANR)年次報告では大腿骨近位部骨折手術は全体の約17%を占め,整形外科手術のトップです。高齢者特有の合併症が早期治療を困難としており,2022年度より早期手術加算が保険収載されました。2022年に当院では,受傷から48時間以内の手術を81%に,また受診から48時間以内の手術を95%に実施しました。当院で早期手術を可能としたシステムを以下に記します。
過去の報告より,手術が遅延する理由は,手術室確保などの施設の問題,マンパワー,そして合併症対策の3つに集約されます。平日に手術枠を確保しようとすると時間外に手術がずれ込み,それがスタッフの疲弊につながっています。
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